EVの「過失事故率」なぜガソリン車より高いのか? 走行距離は短く、安全に運転できるのに――というナゾ

キーワード :
, ,
EVへの移行が進むなかで、維持費や事故リスクの増加が懸念されている。最新の研究によれば、EVの過失事故率は4%増加している。修理費はガソリン車よりも6.7%高く、タイヤのコストも増加している。しかし、燃料費の削減やメンテナンスコストの低下、環境への貢献といった大きなメリットも存在する。社会全体でのエコカー化は、揺るぎないトレンドとなっている。

予想外の保険請求リスク

EV(画像:Pexels)
EV(画像:Pexels)

 最近のデフレの影響で、クルマの維持費は年々上がっている。維持費には必ずかかる費用のほか、交通事故や物損事故の補償金、車体の修理費、交通違反の罰金など、クルマに長く乗るうえで避けられない出費のリスクがある。

 一方、海外市場を中心にガソリン車から電気自動車(EV)への乗り換えが進んでいるが、維持費や出費の面ではどんな変化があるのだろうか。

 新しい研究によると、EVのドライバーはガソリン車やディーゼル車のドライバーよりも過失事故や物損事故で損害賠償請求を受ける可能性が高いという。つまり、ガソリン車からEVに乗り換えた人は、

「自己過失による事故を起こしやすくなっている」

ということだ。

構造が運転に与える影響

EV(画像:Pexels)
EV(画像:Pexels)

 アイルランドのリムリック大学アイルランドソフトウエア研究センター(Lero)とスペインのバルセロナ大学の調査によると、EVのドライバーはガソリン車のドライバーよりも過失責任の請求を受けやすいという結果が報告されている。

 この研究では、オランダで2022年1月から10月までの間に1万4642台のクルマが走行した1億2500万回のデータと、その期間の保険請求データを照らし合わせて分析した。

 EVはガソリン車と比べて機械部品が少なく、リチウムイオン電池やペダル・トランスミッションの制御の違いなど、構造が大きく異なる。この違いが

「運転感覚」

に影響を与えており、ガソリン車からEVに乗り換えると、運転スタイルも大きく変わるとされている。

 ドライバーの運転行動を分析すると、EVやハイブリッド車(HV)は、ガソリン車よりも急加速や急ブレーキが少なく、コーナリングではカーブの曲率が緩くなることがわかった。その結果、スピード違反が少なくなる。つまり、ガソリン車からEVに乗り換えると、全体的に安全運転になるということだ。さらに、EVはガソリン車よりも走行距離が短いこともわかっている。このことから普通に考えれば、

「EVは事故を起こしにくい」

と思える。しかし、興味深いことに保険請求データを分析すると、EVの過失事故率は明らかに高くなっていたのだ。

全てのコメントを見る