佐川急便、宅配便平均8%値上げも 「トラック運賃」全体の底上げを阻む堅牢な業界構造
値上げ幅は平均8%程度
1月末、佐川急便が4月からの宅配便等の運賃値上げを発表した。値上げ幅は平均8%程度と報道されており、かなり思い切った値上げを打ち出した印象である。
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この値上げ発表に対する業界内外からの受け止めを見ると、全般的に好意的であるようだ。同社の株価も一時10%程度上昇するなど、市場からも収益改善が進む可能性が評価されているようである。
同業の陸運各社の株価も同社に触発される形で上昇しており、運賃値上げが業界内に波及することへの期待感も高まっているように見える。
運賃値上げの背景は「コストプッシュ」
佐川急便は発表に際して、値上げの要因を説明している。具体的には、
・エネルギー等の価格高騰
・物流の2024年問題への対応
・サービス品質の維持・向上
という3点である。昨今の運送業の経営環境を踏まえると、いずれも納得できる理由だ。
例えばエネルギー価格を見ると、直近の軽油価格はリッター150円という歴史的な高水準にある。一方、運送業では燃料価格の運賃転嫁がほとんど進んでおらず、現在の運賃水準には織り込まれていない。これに加えて、現在の燃料価格は国の補助金で政策的に押さえ込まれた状態にあるが、今後は、補助金の縮小が予定されている。これに伴って2023年後半には、現在以上に燃料価格が上がる可能性も指摘されている。
2点目の物流の2024年問題についても同様だ。周知のとおり、2024年4月に新制度が施行され、ドライバーの残業時間規制が強化されることが予定されている。ドライバーの給与は残業手当の比率が高いため、「残業時間が減る」ということは
「給料が減る」
ことに直結する。しかしながら(今でも低い)ドライバーの給与をこれ以上引き下げることはあり得ず、基本給の上乗せなどで給与水準を引き上げることが絶対に必要だ。ただし、運送会社には給与引き上げの原資がないため、詰まるところ、荷主へ請求する運賃を引き上げるしかない。
このほかにも高速道路料金の実質的な上昇などもあり、物流の原価はまさに「コストプッシュ」の状態にある。このような環境を踏まえると、同社に限らないが、運賃の値上げは経営上不可欠だと感じられる。