佐川急便、宅配便平均8%値上げも 「トラック運賃」全体の底上げを阻む堅牢な業界構造

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1月末、佐川急便が4月からの宅配便等の運賃値上げを発表した。値上げ幅は平均8%程度と報道されており、かなり思い切った値上げを打ち出した印象である。

遅すぎる値上げタイミング

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 一方、これまでは業界内では「様子見」の状況であり、同社が先陣を切るまで、値上げを積極的に進める動きは表面化して来なかった。

 しかしながら、2024年問題への対応は待ったなしの状況にある。新制度に対応するためには

・給与体系等の社内制度の見直しが求められる
・値上げを受け入れる荷主の側にも予算確保等の準備が必要である

ことを考えると、新制度施行まで約1年に迫った現時点では、値上げを表明するタイミングとしてはむしろ遅すぎるくらいだとも思える。

 さらに言えば、同社以外の運送各社では、値上げの検討が進んでいないように見受けられる点も懸念材料である。

 値上げを実現できるかどうかは経済環境に依存するが、景気の先行きは不透明感を増している。今後コロナ禍からの回復が進むことで、通販貨物が減少するといったように、運送業に向かい風が吹く可能性も指摘されている。

 先送りすればするほど、値上げが難しくなる可能性もあるわけで、運送業各社の早急な対応が必要であることを指摘しておきたい。

値上げの効果は不透明

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 以上で述べたとおり、運賃値上げは妥当であり必要と考えられるが、一方で、実際に「実際に運賃の値上げが起きるか」という視点で見ると、見通しはやや心もとない。

 今回の値上げ対象は基本的に宅配領域に限られる。周知のとおり宅配便は、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社による寡占市場であり、運送会社の側に「ある程度までの」価格主導権があるが、現在の宅配市場のほとんどを占めるのは、(個人間ではなく)「BtoC」と呼ばれる、企業が発送する通販等の貨物である。

 このBtoCの宅配領域は、近年では大手の通販会社がバイイングパワーにより強い価格交渉力を発揮している。その結果、運送会社が定めた運賃表とは大きく乖離(かいり)した大幅に安い運賃が適用されているのが実情であり、運送会社が改定した運賃が、自動的に適用されるような環境とは言えないのである。

 加えて、そもそも宅配便はトラック運送業全体の1~2割程度を占める限られた市場であり、多数を占めるのは企業間輸送を担う「貸切運送」といった事業領域である。貸切運送の領域では多数の中小企業が激しい競争を繰り広げるレッドオーシャンの市場であり、特定の運送会社が値上げの主導権を発揮するのは難しい。

 このように見ると、同社の値上げが全体の運賃底上げにつながるかどうかはまだ不透明だと言わざるを得ない。

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