山陰本線から交通革命が起こる? 自治体団結「交通連合」、ローカル線を救うため事業者依存から脱却だ

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山陰本線利用促進のワーキングチーム検討会で、兵庫県養父市が交通連合の設立を提案した。ドイツで公共交通維持に向け導入されている組織だが、日本初の導入は実現するのか。

設立の是非は引き続き協議へ

山陰本線(画像:写真AC)
山陰本線(画像:写真AC)

 山陰本線利用促進のワーキングチーム検討会で、兵庫県養父(やぶ)市が交通連合の設立を提案した。ドイツで公共交通維持に向け導入されている組織だが、日本初の導入は実現するのか。

「沿線の地方自治体が法人格で規約を持つ組織をつくり、交通事業者とともに事業運営に関与できる方向で検討してはどうか」

 兵庫県香美町役場で2022年末に開かれた兵庫県北部を通るJR山陰本線の利用促進策を考えるワーキングチーム(WT)第3回検討会で、養父市の柳川武まち整備部次長からこんな提案があった。

 柳川次長は市議会のために欠席した広瀬栄市長の代理で出席し、市長の意向を伝えた。提案は自治体と交通事業者が参加して鉄道やバスなど地域の公共交通をひとつのサービスとして運営する交通連合の結成を呼び掛けたものだ。今後の方向について、WT事務局の兵庫県但馬県民局は

「自治体などが話を持ち帰って検討し、引き続き協議していく」

と述べた。

輸送密度2000人という壁

城崎温泉(画像:写真AC)
城崎温泉(画像:写真AC)

 WTは兵庫県のJRローカル線維持・利用促進検討協議会に設けられた分科会のひとつで、JR西日本、全但バスなど交通事業者に加え、豊岡市、養父市、朝来市、香美町、新温泉町の5市町が参加している。

 JR西日本によると、山陰本線・城崎温泉(豊岡市)~浜坂(新温泉町)間の輸送密度(1km当たりの1日平均利用者数)は

・2020年度:506人
・2021年度:606人

だ。JR西日本が利用の少ない路線の目安に掲げた2000人、国土交通省の有識者会議が路線のあり方を協議すべきと提言した1000人を大きく下回っている。

 検討会では利用者を

「5年間で2020年度の4倍にする」

という強気な提案が示されたが、実現に向けた施策は

・ICカードや新型車両の導入
・駅周辺駐車場の整備
・通勤通学定期購入の補助
・駅周辺のスポット開発
・キッチンカーなどイベント開催
・観光利用の促進

と目新しいものは見られなかった。

 利用者増の提案は輸送密度2000人をクリアするのが狙い。しかし、JR側から

「今までと同じことをしていたのでは2000人に戻せない」

との声が出るなど、実現に疑問符がぬぐえない。それだけに、交通連合の提案が余計に目を引く形になった。

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