JR依存からの脱却! 自治体が粛々と進める「赤字ローカル線」利用促進の波、今こそ地元の本気度を見せつけろ
島根県がビジネス利用の促進策

島根県などでJRの赤字ローカル線維持に向け、利用促進を図る動きが加速している。急激な人口減少が強い逆風となるなか、効果的な方策を見つけることはできるのだろうか。
「企業の会議などを駅の近くで開催してもらい、鉄道利用が増えるモデルプランを作っていきたい」
11月中旬、島根県出雲市のツインリーブスホテル出雲で開かれた、島根県鉄道整備連絡調整協議会(会長=丸山達也県知事)の幹事会。事務局を務める島根県交通対策課の土江裕之課長らが、2023年度から始めるJRの利用促進策について説明した。
協議会はJR沿線の地方自治体や商工団体などで構成する。官民のプロジェクトチーム(PT)を6月に立ち上げ、鉄道利用の促進策を検討してきた。背景に見えるのは、JR西日本が赤字ローカル線の見直しに動き始めたことに対する強い危機感だ。
幹事会で報告された利用促進策は、PTが打ち出した第1弾。島根県内の企業が会議や出張で鉄道を利用する割合がわずか7%しかないことに着目し、ビジネス利用の促進を図るのが狙いで、山陰本線の松江駅、出雲市駅、浜田駅の周辺にある会場を使ったビジネスモデルを作る。
島根県が2021年夏、出張の際に最寄り駅から用務地までをレンタカーで移動する独自の鉄道利用策を始めたことを参考にした。利用促進策に取り組む企業に対しては支援策を用意する。
協議会は今後もPTでの検討作業を続け、ビジネス利用以外の利用促進策も打ち出す構え。島根県交通対策課は
「人口減少で鉄道利用の落ち込みが深刻さを増している。ビジネス利用だけでなく、二の矢、三の矢を打ち出して利用者減少に少しでも歯止めをかけたい」
と語った。
赤字ローカル線の維持に向けて利用促進をJR任せにせず、自治体や商工団体で打開策を出そうとする動きは、島根県以外でも見られる。岡山県は7月、県内27市町村とともに実務者レベルの岡山県JR在来線利用促進協議会を設置し、姫新(きしん)線、赤穂(あこう)線の利用促進策検討に入っている。
このほか、秋田県や岩手県、兵庫県、長崎県でも県主導の下、官民一体となって利用促進策を模索する動きが出てきている。