驚異の最新技術! スマホが「土砂崩れ遭難者」を救えるは本当か
ドローンを長時間飛行可能に
このシステムで採用されているのは「有線給電ドローン」だ。
スマートフォンを捜索する「主ドローン」と、電源ケーブルを持ち上げて制御する「補助ドローン」の2機のドローンを同時に使い、障害物を避け、給電しながら飛行することで、長時間かつ最長約200mの範囲を移動することが可能となる。
2022年11月25日には、実証実験の報道公開も行われた。当日は、千葉県長生村にある双葉電子工業の工場敷地内に、スマートフォンが埋められた最大5mの土砂の山が準備された。土砂と地上の給電装置との距離は約200m。その間には高さ約10mの木々や、高さ約3mの柵がある。
主ドローンだけでは電源ケーブルが引っ掛かってしまうが、補助ドローンがケーブルを持ち上げることで土砂の山上空に到達した。そして、地中4mの深さに埋まったスマートフォンの位置を誤差数mで特定することに成功。その有用性が示された。
スマートフォンの充電は常にフルに
災害現場では、生死を分けるタイムリミットは72時間とされている。そのため、いかに早く現場へ到着し、いかに長く捜索し続けられるかがカギとなる。
有線給電ドローンは普通のドローンと比べて小回りは利きにくいが、その自由度を犠牲にしてでも、現場に長く止まり続ける工夫をしたのがこのシステムの特徴といえる。
一方、当然ながら遭難者がスマートフォンを持っていることが前提のため、高齢者や子どもの捜索には不向きな場合もある。また、技術面では、土砂の水分量が増加すると電波の到達深度が浅くなるため、大雨や洪水などによる被災地での捜索は難しい可能性がある。さらに、あらかじめ端末に専用アプリをインストールしておく必要があるため、汎用(はんよう)性の観点で多少のハードルもある。
いくつか課題は残るが、この手法が一般化すれば災害時の人命救助の一助となることは間違いない。従来の捜索方法とうまく併用しながら使っていくことが重要である。
一刻も早い実用化を心待ちにしつつ、このシステムのためにも常にスマートフォンの充電はフルにして、日頃から災害を意識した備えを万全にしたいものだ。