時速200kmで衝突 相手死亡も、真っすぐ走れば「危険運転にあらず」は理不尽だ! 今こそ求められる司法の歩み寄り

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時速194kmで一般道を走る車が事故で他人を死亡させても、この国では「まっすぐ走らせている」から「危険運転にはあたらない」とされてきた。しかし、この流れが変わろうとしている。

ハードルが高い「危険運転致死傷罪」

救急車(画像:写真AC)
救急車(画像:写真AC)

 しかし大分地検にも事情がある。今回の事故に限らず、それほどまでに「危険運転致死傷罪」適用のハードルは高かった。

 例えば、2012年の京都府亀岡市で起きた無免許の少年らによる「亀岡暴走事故」でも、当時の京都地検は危険運転致死傷罪での起訴を断念、過失運転致死傷罪で起訴するに至った。

 無免許で居眠りして登校中の児童と保護者を次々とはねて10人死傷(死亡3人、重軽傷7人、胎児1人死亡)という大事故にも関わらず、地検は

「無免許でも長期間にわたり運転できていたので運転技術はある」

として、運転していた少年を危険運転致死傷罪でなく過失運転致死傷罪で起訴した。判決は紆余(うよ)曲折を経て2013年9月、懲役5年以上9年以下の不定期刑で確定、他の少年らも執行猶予および罰金刑となった。

 それでは、公安委員会が発行する公文書たる運転免許とその制度の意味は何なのか、疑問ばかりの判断だったが、当初は大分地検もこの亀岡の判例が頭にあったことは違いない。そうでなくとも、これまでの危険運転致死傷罪に問えなかったあまたの重大事故の積み重ねとその判例があっただろう。

 そもそも運転致死の「危険」とはなんぞや、「過失」とはなんぞやという話だが、この国の司法には基本、

「制御できていれば危険ではない」

という前提があった。何が「危険運転致死傷」なのかは以下の通りである(本稿関連部分のみ抜粋、2014年施行時点)。

●自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
(危険運転致死傷)
第二条
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

 現在では改正自動車運転死傷行為処罰法(2020年7月2日施行)によって、他にもいわゆる「あおり運転」に関する危険運転行為などが追加されている。今回の事故では主に「四」でいけるとして訴因変更したと推測する。

 大分県警は「危険」と判断したにもかかわらず大分地検は当初「過失」と判断したが、地検としては万が一、危険運転致死で起訴して負けたら、という不安があったのかもしれない。「二」では確かに前例を踏まえれば難しい。実のところ「四」でも確証はない。それほどまでに現状、危険運転致死傷罪のハードルは高い。

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