仏アルストムの高速列車「AGV」 世界最速技術投入も、フランスで採用されなかったワケ
フランス・アルストム社製の高速列車「AGV」は、大きな期待を担った車両だったが、本国フランスでは採用されなかった。その理由を解説する。
フランス国内の状況に対応できず

しかし、その後AGVは他社で採用されることはなく、結局このイタロ用25本の製造だけで終わってしまった。アルストムが満を持して世に送り出した渾身(こんしん)の一作だったはずのAGVが、本国フランス国鉄を筆頭に、他で一切採用されなかった理由とは何だったのか。
前述の通り、AGVは動力分散方式を採用した。TGVでは両端の機関車に制御機器やモーターなどといった動力装置を全て搭載しており、従って機関車部分に乗客の乗るスペースはなかった。これでは非効率なので、動力装置を各客車にも分散して搭載したのがAGVというわけだが、ここで2つの大きな問題が生じた。一つは、フランス国内のホームの高さが低いこと、もう一つはフランス国内の需要が大きく、十分なキャパシティーが必要だったということだ。
ホームの高さが低いということは、列車に乗るときに大きな段差が生じるわけだが、昨今のバリアフリー対策として、可能な限りホームと車両の段差は抑えなければならない。低いホームには当然低床車が必要となるが、床下に機器類を満載したAGVではこれに対応することができない。
一方のキャパシティーについて、こちらも動力分散方式のAGVでは機器搭載スペースの関係で2階建てにすることは難しく、国際基準として定められている全長200mの編成で考えた時、AGVが最大で約460席なのに対し、動力集中方式の2階建てTGV-Duplexは500席以上を確保できる。限界一杯まで列車本数を増やしているパリ~リヨン間を筆頭に、フランス各都市間を結ぶルートは1席でも多く増やしたいというフランス国鉄の意向もあり、AGVの採用は不可能という判断が下された。