物流を破壊する「送料無料」 消費者の“当たり前”は業者の犠牲でできている、政府はすぐに表記を是正せよ
ECサイト大手がかつて起こした大騒動

確かに、2019年にECサイト大手が出店事業者に一律で送料を無料とする制度を導入しようとして、のちに公正取引委員会をも巻き込んだ騒動となったことがある。
送料無料制度に参加しなければ
・検索結果を不利にする
・契約更新せずに退店とする
などの通告がECサイト営業担当者複数からあったとして、公正取引委員会は2020年2月、独占禁止法違反で立ち入り調査の上、緊急停止命令を出すよう東京地裁に申し立てた。
この騒動は「優越的地位の濫用」であり、「いよいよ排除措置命令か」といううわさもあったがECサイト側が折れて延期を発表、しかし、参加は強要しないとして送料無料ラインは導入された。このように、ネットショップに関してはECサイトとの関係も含め、従来の「店側が悪い」が一概には通用しない事情がある。
少ない声でしかないが、筆者(日野百草、ノンフィクション作家)の知人にも協力してもらい、20人ほどの人たちに送料無料をどう思うか意見をもらった。ほとんどが「送料無料のほうがいい」とのことだったが、下記のような個々人の意見ももらった。
「やっぱりネット通販は送料無料で選びますよ。得した気分になりますから」(30代女性、パート)
「送料が無料なのは当たり前でしょう。ネットショップなんて、どうせ価格に乗せてるんだから」(40代男性、派遣社員)
「はっきりいって、私に関係ない話ですね。だったら(送料は)無料のほうがいいです」(50代男性、アルバイト)
「比較サイトで一番安いところを選んで、さらに送料が無料かどうかでショップを絞ります。ネットの仕組みでそれができるんだから、仕方がないのでは」(40代男性、会社員)
「送料を払うのが嫌です。損した気分になる。送料を誰が払うかはお店と配達する人の問題でしょう」(70代男性、無職)
重ねるがあくまで「彼らの感想」でしかないが実際、2022年に発表された生活者起点のリサーチ&マーケティング支援を行うネオマーケティング(東京都渋谷区)によるECショップ利用に関するリサーチによれば、「送料が安いか」が重要、やや重要を含めて88.8%、うれしいと感じる送料設定は「全品送料無料」が74.1%となった。
古い調査でも、企業のサプライチェーン基盤の構築支援などを手がけているマンハッタン・アソシエイツ(東京都港区)による2017年の発表によれば、79%が配送料を支払うことに抵抗を感じると答えた。いやはや、消費者の「送料無料信仰」は今回のヒアリング通り根強く、そして手ごわい。