守るべきは社員の「雇用か賃金か」 コロナ禍の航空業界から見えた日米「雇用制度」の差、正しいのはどちらなのか

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コロナ禍で明らかになった日米欧の企業文化・雇用制度の差。航空業界を通して考える。

コロナ禍で雇用を重視した日本

飛行機(画像:写真AC)
飛行機(画像:写真AC)

 コロナ禍はさまざまな経済活動に打撃を与えたが、そのなかでも大きな打撃を被った業界が航空業界だ。世界各国が水際対策として入国制限を行い、国内についても移動の自由を制限したことから需要が蒸発してしまった。

 世界各国の航空会社は経営危機に陥り、今いる社員を維持することも難しくなったが、雇用調整の過程では、日本と欧米の航空会社では異なる面が見られた。

 今回紹介する首藤若菜『雇用か賃金か 日本の選択』(筑摩書房)は、この問題を取り上げながら、

・雇用を重視した日本
・賃金を重視した欧米

という構図を取り出している。

 後半では縮小がつづく百貨店業界の事例も取り上げ、長期的な雇用調整についても論じているが、ここでは前半のコロナ禍の航空会社で起こった雇用調整とその分析を紹介したい。

 本書では、日本の事例として全日本空輸(ANA)グループを取り上げている。世界の航空旅客数はコロナ前まで年々増加しており、2019年は過去最多の約45億4300万人だった。しかし、これが2020年には約15億人と、66%減少した。

 日本ではインバウンド需要が増加しており、さらに2020年には東京オリンピックが予定されるなど旅客数の増加が見込まれ各社は採用を増やしていたが、コロナによってその需要は消え去った。日本の航空輸送の国内線・国際線合計の旅客数は2019年度の1億2300万人から2020年度は3500万人にまで減少している。

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