守るべきは社員の「雇用か賃金か」 コロナ禍の航空業界から見えた日米「雇用制度」の差、正しいのはどちらなのか

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コロナ禍で明らかになった日米欧の企業文化・雇用制度の差。航空業界を通して考える。

人員削減にも着手したANA

羽田空港(画像:写真AC)
羽田空港(画像:写真AC)

 そこで、ANAグループは、2020年4月に一時休業を始め、同時に役員報酬と管理職賃金のカットを実施し、2021年度の採用活動を停止した。

 2020年度の一時金は、ほとんどのグループ会社で夏1.5か月、冬0.5か月の合計2か月、ANAでは夏1か月、冬はゼロとなった。それまではおおむね6か月水準で合意していたので、これは大幅な減少になる。

 2020年の秋になっても厳しい状況は改善されず、会社は組合に対して月例賃金のカットを提案した。最終的にグループ会社の一般職で1~4%、ANAの一般職で5%の減額が2021年1月から時限的な措置として実施することが決まり、社員の賃金は大きく下がることになった(月例賃金のカットは2022年の春闘で打ち切りが決まった)。

 実際の賃金は残業時間の減少などによってこれ以上に減っており、乗務時間に応じた手当や休日労働手当、深夜労働手当などの変動給が大きかった客室乗務員では特に大きな減収となった。

 一方、会社側は埋め合わせとして、休業・休職制度を統合したサバティカル休暇制度を設けたり、客室乗務員の勤務体系を柔軟にしたりするなどして、多様な働き方を認める姿勢を見せた。さらにグループ外企業への在籍出向を拡大させ、人件費の負担を減らそうとした。

 2020年の10月には、ついに希望退職を募るという形で人員削減にも着手する。ただし、ANAグループでは希望退職者の目標数を設定せず、個別面談も実施しなかった。結果的に離職したのはグループ全体の数%にとどまったと推定されている。

 一方、欧米の航空会社では人員削減が行われた。アメリカでは2020年3月にCARES法が成立し、そのなかには航空業界に対する給与支援プログラムも含まれていた。これを受けて各社はその期限の9月30日まで雇用を保護することを発表する。

 しかし、航空需要の落ち込みは想定以上のもので、各社は支援プログラムが切れることに備えて大規模な雇用調整をしなければならないと判断するようになる。アメリカン航空とユナイテッド航空は約3割の人員削減計画を打ち出し、サウスウエスト航空も自発的休業者と自発的退職者の大規模な募集を開始した。