東急の運転士が「非常用ドアコック」悪用で逮捕 なぜ類似トラブルは繰り返されるのか

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鉄道の非常用ドアコックを悪用するトラブルが絶えない。解決方法はあるのか。

ドアコックによる運行妨害は年数回

非常用ドアコック(画像:京王電鉄)
非常用ドアコック(画像:京王電鉄)

 東急の運転士が小田急の運行妨害の疑いで逮捕――。そんな奇妙な事件が11月9日、報じられて話題となった。

 報道によれば、この運行妨害は2022年7月に小田急電鉄の柿生駅で発生した。当事者である東急電鉄の運転士は通勤中で、当日遅刻しそうだったため、鉄道車両の外部にあった非常用ドアコック(以下、ドアコック)を使い、出発しそうだった電車のドアを開けて乗車した。ようは、運転士としての経験をうまく使ったわけだ。結果、乗車できたものの、安全確認のため、電車の出発は5分ほど遅れ、運転士は威力業務妨害の疑いで逮捕された。

 ドアコックは鉄道車両の内外に設置されている。操作すると、ドアを閉める空気圧が下がり、手で開けられるようになる。安全装置として必須のものだ。

 とりわけ車内に設置されたものは、乗客にもわかりやすい形で掲示されている。鉄道を使う大半の人は

「非常時になったら、ドアコックでドアを開ける」

と知っているだろう。ただ、そのわかりやすさゆえに「乗り間違えた」「降り損ねた」などのさまざまな理由で、乗客が勝手にドアを開ける事件が何度も起きているのだ。

 全国の新聞過去記事を調べてみると、ドアコックの操作による運行妨害は年に何度か必ず報じられている。かつては「犯人」は見つからないことが多かったものの、近年は防犯カメラなどが整備されたためか、逮捕されることが多い。

 報道では「威力業務妨害の疑い」で逮捕されたものが多いが、このほかにも鉄道営業法違反、新幹線の場合は新幹線特例法違反などのさまざまな刑事罰に加えて、損害賠償を請求される可能性もある。

 つまり、

「個人的理由でドアコックを操作する = 犯罪」

という考えは広く知られているが、それでも手を染める者は後を絶えないのだ。

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