EV化で岐路に立たされた自動車部品サプライヤー その活路を開く「リスキリング」とは何か
EV化に押される日本の自動車業界
自動車産業は日本の基幹産業だ。国内完成車メーカー主要7社の取引先企業(サプライヤー + 販売)の総数は、1次請け、2次請けのみで約2万7000社もある。その従業員の合計は約964万人にのぼる(東京商工リサーチ 2020年)。
そんなサプライヤーが現在、電気自動車(EV)化の波にさらされている。筆者(吉井たくや、交通ライター)は、かつて自動車部品サプライヤーに勤務していたが、ほんの10年前までは
「EV化が進んでも、われわれの生きている間は心配はいらない」
という認識が当たり前だった。
しかし、テスラをはじめとする新興メーカーの台頭で、自動車産業には「100年に1度」の大変革期が訪れている。帝国データバンクの調査によると、実に5割近くの自動車関連業種が「EV化でマイナスの影響がある」と回答した。この荒波を、彼らはどう乗り切ればよいのか。
サプライヤーの脅威は「動力源の変化」
自動車のEV化で最も変わるのは「動力源」だ。
従来の自動車の動力はエンジンだが、EVではモーターとなる。したがって、エンジン関連のサプライヤーは大きな影響を受ける。また、自動車がEV化すると、部品点数が大幅に減少する。エンジン車に使用する部品は3万点である一方で、EVは2万点だ。1台につき1万点も使用部品が減少するとなると、サプライヤーへの打撃は計り知れない。
エンジン車は、さまざまな部品のすり合わせで生産される。すり合わせの技術は、長年の知識や経験で生み出される。そうしたノウハウが、3万点もの部品で構成されるエンジン車の量産を実現してきた。これこそ、競争力の源泉だった。サプライヤーは価格競争ではなく、
「すり合わせの技術力」
で、自動車生産を支えてきたのだ。
しかし、EV化で構造がシンプルになり、部品点数が大幅に減少する。そうなると従来のサプライヤーが得意としてきたノウハウが生かせなくなるため、今まで優位だったサプライヤーも劣勢に立たされる。