EV化で岐路に立たされた自動車部品サプライヤー その活路を開く「リスキリング」とは何か

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自動車のEV化で最も変わるのは「動力源」だ。そのため、既存サプライヤーにはリスキリングが求められている。

EVがスムーズに走れるワケ

レクサスなどに搭載されているトランスミッション(画像:アイシン)
レクサスなどに搭載されているトランスミッション(画像:アイシン)

 例えば、トランスミッション(変速機)、クラッチというエンジン部品があり、これらはエンジンの回転数を調整する役割を果たしている。エンジン車の場合、加速から走行、減速というフェーズで、適切なエンジンの回転数が変化するため、このような部品が必要なのだ。

 一方、モーターの場合は回転直後に最大のトルク(自転車で例えるとペダルを踏みこむ力)を発生し、回転の上昇とともに安定してくる。エンジン車のように、フェーズに合わせて回転数を調整する必要はない。ギアチェンジの振動がないので、EVのコマーシャルでは、「スムーズな走りが実現」などとうたわれている。

 もちろん、モーターでも高速走行する際、トランスミッションが必要な場合もある。しかし、それはレースに参加するレベルのEVの話であって、一般的なEVで必要になることはほとんどない。

 トランスミッションやクラッチには、高度なすり合わせ技術が必要とされる。それらが不要となれば、すり合わせ技術で競争力を磨いてきたサプライヤーは打撃を受けるというわけだ。

打撃を受ける主なサプライヤー

ジヤトコのウェブサイト(画像:ジヤトコ)
ジヤトコのウェブサイト(画像:ジヤトコ)

 自動車のEV化で打撃を受けるサプライヤーはさまざまだが、筆者は特に、トランスミッションやクラッチを製造しているサプライヤーが打撃を受けると考えている。ここで、有力サプライヤーをいくつかピックアップする。

・アイシン(愛知県刈谷市):売上高の56%をパワートレイン(トランスミッションなど)が占めている。
・ジヤトコ(静岡県富士市):オートマチックトランスミッションの専門メーカー
・エクセディ(大阪府寝屋川市):売上高の89%をクラッチが占めている。

 もちろん、これらのメーカーもすでにEV化へ動き出している。アイシンとジヤトコは「eアクスル」と呼ばれる、モーターや減速機などの部品を一体化させた製品を開発している。つまり、長年培った技術をEV時代にも生かそうというわけだ。

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