EV化で岐路に立たされた自動車部品サプライヤー その活路を開く「リスキリング」とは何か

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自動車のEV化で最も変わるのは「動力源」だ。そのため、既存サプライヤーにはリスキリングが求められている。

カギとなるのは「リスキリング」

エクセディのウェブサイト(画像:エクセディ)
エクセディのウェブサイト(画像:エクセディ)

 また、筆者はリスキリング(学び直し)が、サプライヤーのカギになってくるのではないかと考える。リスキリングとは、企業が従業員に対して新しいスキルを教えることだ。リスキリングは単なる個人の興味・関心で学ぶのではなく、所属する会社の

「事業継続」

のために学ぶのだ。

 自動車部品サプライヤーの場合、EV化によって不要になる部品の技術者に対してリスキリングを行わなければならない。既存の技術や人材を、短期間でEVに最大限適合させるのだ。

 自動車部品世界最大手のボッシュ(ドイツ)は2022年の年次記者会見で

「従業員のトレーニングやリスキリングプログラムに継続的に投資し、過去5年間で10億ユーロを投じている」

と発表した。これまで、EVに必要なソフトウエアなどを扱ってこなかった従業員に対して、ソフトウエア部門への異動を奨励している。

 ボッシュをはじめとするドイツ企業はリスキリングを積極的に行っているため、ドイツの労働生産性は日本よりはるかに高い。同じ自動車大国であるドイツから学ぶべきことは多い。

 自動車部品サプライヤーの場合、エンジン部品の技術者をEVに必要なソフトウエアプログラマーに転向させるなど、思い切ったリスキリングが必要だ。外部から新たな人材を獲得する選択肢もあるが、IT人材の不足や自動車に精通していない人材を一から育成するには時間とコストがかかる。社内人材をリスキリングすることが一番の近道なのだ。

 リスキリングで高付加価値の製品を生み出せれば、日本経済低迷の原因である労働生産性の低さを改善できる。自動車部品サプライヤーが先陣を切って、今こそ旗印を掲げる時ではないか。

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