タクシーのチップ、今でも渡す人は多いのか? 現役ドライバーが見た、キャッシュレス時代の粋人とは

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タクシー業界の内情を知る現役ドライバーが、業界の課題や展望を赤裸々に語る。今回は、乗客からの「チップ」について。

「チップをもらえる運転手になれ」

街を行くタクシーのイメージ(画像:写真AC)
街を行くタクシーのイメージ(画像:写真AC)

 東京都内では約4万7000台のタクシーが、都心から下町、住宅街まで、まさに迷路のような道を日夜走り回っている。ここでは現役タクシー運転手の筆者が見てきた現場でのエピソードを紹介しつつ、タクシー業界が抱える課題を取り上げてみたい。

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 欧米と比べて日本ではあまりなじみのない「チップ」の習慣だが、タクシーの世界では、入社早々に「チップをもらえる運転手になれ」と真顔で会社や上司から言われる。

 これは、チップをもらえるような気配りや、機転の利いた対応の良い運転手になれという意味だ。

バブル期の信じられないチップ事情

 1980年代後半から90年代初頭にかけてのバブル時代は、1回のチップが1万円というものもそれほど珍しくなかった。

 平日夜の23時を回る頃、繁忙時間になるとタクシーをめぐる状況は一気に熱を帯びる。どこの駅周辺や繁華街も空車が一斉になくなり、運転手と客の立場が逆転する。

 近場行きの客は敬遠され、長距離客が多くいる効率の良い駅などに空車は群がった。銀座、赤坂、六本木……。客も早く帰宅したいから、1万円札を振りながら車を取り合いしたのだ。

 4人相乗りの“点々降ろし”で4万から5万円の売り上げなどという、今では信じられないようなこともあった。当然、チップも相当な額になった。

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