タクシーのチップ、今でも渡す人は多いのか? 現役ドライバーが見た、キャッシュレス時代の粋人とは

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タクシー業界の内情を知る現役ドライバーが、業界の課題や展望を赤裸々に語る。今回は、乗客からの「チップ」について。

チップが多いのは若い運転手よりベテラン?

街を行くタクシーのイメージ(画像:写真AC)
街を行くタクシーのイメージ(画像:写真AC)

 ご想像の通り、タクシーのチップもまた景気に大きく左右される。

 筆者の場合、「お釣りはいらない」「コーヒーでも飲んで」「つまらん話を聞いてくれたから」「(乗降時の)介助を手伝ってくれた」などという理由で、小銭を置いていってくれる乗客たちのおかげで、1日で2000円前後にはある。

 この額は、若い頃より熟練になってからの方が増えた。Suica、PASMO、クレジットカードなどのキャッシュレス決済がどんどん増えている今、チップは減るかと思っていたら、それとは別に100円玉を1、2枚、受け取り皿に置いていってくれる。

 他人に対する気配り――。金銭そのものというよりも、その心遣いが本当にうれしく思うものである。運転手にとってほんの短い時間、狭い車内でのやり取りを通して、人情が通い合った証しのように感じられるからだ。

チップをはずむ、太っ腹のある職業とは

 十数年ほど前、今は亡き元有名プロレスラーが筆者の車に乗ってくれたことがある。

 都内某所のホテルから目的地まで、料金は820円なり。ところが彼は5000円札を出して「これチップだ。取っておいて」と告げ、そのまま降りて行った。

 いつだったか、都内の某体育館から覆面にジャージ姿のプロレスラーを乗せた。乗るとすぐに「オー、あっついナーァ」と覆面をヨイショとはがした。素顔が意外とイケメンで、筆者は「お客さん、覆面しない方が人気出るんじゃない」とつい言ってしまう。

 すると「おー運転手さん、口がうまい。よし、気分がいい。このまんま池袋まで高速に乗って行って」と8000円の客になった。おまけにこの人、「釣りはいらない」と1万円札をポイと置いていった。

 昔、力道山が静岡県内のゴルフクラブでキャディーさんに10万円のチップをあげたと週刊誌で見たことがあった。1960年代だから今だと100万円といったところか。

 プロレスラーは、情に厚くて人を喜ばせることが好きな性格が多いのではないだろうか。もちろん稼ぎもわれわれ“サラリーマン”とはケタが違う。

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