運転中のドライバーを襲う「意識不明の事故」 プロドライバーさえ防げない悲劇、その根本原因とは何か?
運転中にもしドライバーが意識を消失したら、クルマは、ドライバー本人はもちろん周囲の人々の命を脅かす凶器と化す。このような事態に対し、ドライバーの体調不良を検知できる仕組みはないのだろうか?
乗務前点呼での疾患察知は極めて困難
以前執筆した『「18時間も会社にいる」 中小運送社長の届かぬ悲鳴、ドライバー業界を悩ます「点呼問題」の闇とは』(2022年8月22日配信)でも説明したとおり、バス、タクシー、トラックなどの自動車輸送事業者は、ドライバーが乗務する前後の点呼実施が義務付けられている。
特に乗務前に行う点呼は、飲酒の有無やドライバーの健康状態をチェックすることで、安全な運行を守る砦(とりで)の役割が大きい。
点呼を行うのは、運行管理者とその補助者である。運行管理者は国家資格ではあるが、健康管理のプロではない。
そもそも、当人の自覚症状もなく、本職の医師ですら発症を事前に察知することが難しい心臓疾患、脳疾患、大動脈瘤や大動脈解離などの意識消失の危険性がある疾病を、運行管理者が察知するのは極めて難しい。
事故原因の8割超は「認知」「判断」の誤り
そもそも、交通事故の原因はなんだろうか?
自動車運転は「認知」「判断」「操作」の順番で行われるが、交通事故の85%は、認知ないし判断の誤りを原因として発生している。
運転中に意識を消失するという事態は、運転の3要素である認知能力が失われ、したがってその後の判断、操作ができなくなった状態を示す。
逆に言えば、認知と判断の誤りを防ぐことができれば、交通事故の9割近くは減らすことができることになる。
自動運転・無人運転の実現によって交通事故の減少が期待されるのは、人間よりも機械の方が、認知・判断を正確に行うことができるはずであると期待されているからだ。