JAL・ANAびいきのシニア層を奪えるか? スターフライヤーとジャパネットの業務提携がもたらす新「機内エンタメ」の可能性とは
機内エンタメの新たな可能性

さて、ジャパネットとスターフライヤーは今後、どのようなシナジー効果を生み出すだろうか。全国に顧客を持つジャパネットの販売チャンネルを使うことで、これまでアピールしづらかった年齢層や地域への顧客開拓が可能になる。またジャパネットにとっても、自社商品を機内販売できることは魅力的だ。家ではチラシをほとんど見ないのに、機内販売のカタログはじっくり見る人は多い。
ジャパネットは、自社のBSチャンネルでグルメや観光地を紹介する旅番組を持っている。このノウハウを生かし、スターフライヤーの行き先に合わせた観光情報を機内モニターで放映することを計画している。これが実現すれば、機内エンターテインメントの流れを大きく変えることになるだろう。
航空会社が提供する国内線の機内エンターテインメントといえば、機内雑誌か音楽かの2択だった。それが、目的地に向かいながらモニターで到着先の観光情報を楽しめるようになれば、機内という環境も相まって、旅の期待感を高めるだろう。
季節や月ごとにシリーズ化した番組であれば、スターフライヤーに乗ること自体が旅の醍醐味(だいごみ)になる。単なる移動手段から、付加価値が付けられたエンターテインメントへと顧客体験を高めることができるのだ。
長崎-羽田線は実現するのか

地域創生を掲げるジャパネットは、2022年からサッカースタジアムやホテル、商業施設などを擁する長崎スタジアムシティの建設に着工している。この大規模プロジェクトでビジネスや観光客の誘致を十分に見込めれば、スターフライヤーによる羽田-長崎線就航の可能性もあるだろう。
新規参入は通常、ハードルが高い。さらに長崎-羽田路線はJALやANAに加え、同じく独立系のソラシドエア(宮崎県宮崎市)がすでに就航している。実現のハードルは高いが、需要が見込めればありえない話ではない。
今回の連携では、ジャパネット運営のサッカーチームであるV・ファーレン長崎の観戦ツアーや、福岡と長崎を中心とした九州北部周辺地域へのチャーター便ツアーも視野に入れている。ジャパネットは、2017年にクルーズ事業で旅行業に参入しており、寄港地の観光スポットを無料で巡るバスサービスなど、顧客に徹底して寄り添うサポートで成功を収めている。
スターフライヤーも、北九州を拠点にいくつかチャーター便を飛ばしてきたが、いずれも移動手段としての役割のみだった。せっかくならば、他の航空会社との差別化を期待したい。それこそ、V・ファーレン長崎のサポートTシャツを着たCAが迎えたり、チームの応援ソングを流したりと、
「移動自体をエンターテインメントにする」
ことも面白いのではないか。