荷物輸送は「ローカル線廃止」を阻止できるか? バス転換の前に考えたい、線路の有効な使い道とは
昨今のトラックドライバー不足解消や地球温暖化対策をふまえると、鉄道荷物輸送はローカル線を救う切り札になり得るのではないだろうか。
鉄道×バスという異色の組み合わせも

九州産交バス、JR九州、タクルーの3社は、各社が提供する輸送サービスの特性を生かしながら、短期的にはMaaS(マース。次世代移動サービス)などの新たなテクノロジーの導入・活用により、熊本県内の輸送サービスの利便性向上に取り組んでいる。
この取り組みのなかで、九州産交バスとJR九州は、荷物輸送事業の実証実験を開始した。具体的には、バスの広域ネットワークとJR九州の新幹線による速達都市間輸送を組み合わせ、地域で採れた野菜や海産物などの生鮮食品を、その日のうちに福岡に届けるとのことだ。
この取り組みのユニークなところは、フィーダー部の輸送に、トラックでもタクシーでもなく、路線バスを使用するところにある。今回は新幹線との組み合わせであるが、山間部の地域バスとローカル線を組み合わせた物流体系を構築できないかなど、興味はつきない。
課題は安定した輸送の確保

過疎化がますます進む地方においては、鉄道が旅客を運び、トラックが荷物を運ぶという住み分けが、かえって非効率を産む構造となっている。
旅客と荷物という垣根を取り払い、輸送手段としてローカル鉄道を有効活用するのであれば、ローカル線の活性化や収支改善、トラックドライバーの労働問題、地球環境問題の解決につながる可能性を秘めているのではないだろうか。
観光中心のローカル線利用促進策や、バス路線への転換が議論の中心になりがちなローカル線問題だ。今後は荷物輸送を含めて、
「線路を使って何が運べるのか、何ができるのか」
まで掘り下げて議論を行うべきであろう。
とはいえ、輸送量の多い幹線と比較して、災害対策が脆弱(ぜいじゃく)であるローカル線は、安定した輸送の確保がネックとなる。降雨などによる相次ぐ運転休止に伴うサービスの低下、災害復旧費用の問題など、整理すべき課題も多い。