JR東海「名松線」に押し寄せる合理化の波! 2度の廃線危機を乗り越えた過去、沿線住民の熱意はいつまで続くのか
三重県松阪市の松阪駅と津市の伊勢奥津駅を結ぶ名松線。同線はこれまで、2度の廃線危機を免れてきた。その背景にはいったい何があるのか。
「ドル箱路線」に支えられるJR東海
JR各社がローカル線の収支を公表し、廃止・バス転換の動きを進めるなか、JR東海だけが独自の動きを見せている。JR東海の金子慎社長は8月4日、「廃線やバス転換を予定している線区はない」と明言した。
2022年4~6月のJR東海の営業損益は、253億600万円の赤字となった前年同期から打って変わって
「835億4000万円」
の黒字となった。
コロナ禍の影響からは回復できていないものの、2014年並みまで回復している。この黒字額はJR東日本の
「402億9700万円」
を大きく引き離す金額だ。
金子社長の発言は「ドル箱路線」の東海道新幹線を抱え、中央リニア新幹線の建設も進むなかでの富者の余裕なのだろうか。しかし実情をみると、そこには赤字路線でも維持を求める民意があった。
輸送密度1000人未満は「名松線」のみ
国土交通省が有識者による検討会で示した存廃の目安は、輸送密度(1kmあたりの1日の平均乗客数)が1000人未満の路線だ。
JR東海管内で2021年度に1000人未満となった路線は、三重県松阪市の松阪駅と津市の伊勢奥津駅を結ぶ名松線だけで、その数は
「195人」
だった。JR西日本のワースト区間である芸備線の東城~備後落合間(9人)、JR北海道宗谷線の名寄~稚内間(174人)、JR東日本陸羽東線の鳴子温泉~最上間(41人)のような路線を抱えていないことを考えると明らかに強い。
なお、JR東海管内で輸送密度が2000人以下となるのは、名松線のほか
・紀勢本線:1044人
・参宮線:1203人
・飯田線:1390人
・高山本線:1769人
の4路線だ。