専業ドライバーに迫る危機! 軽乗用車「運送業解禁」で、子育て主婦がライバルになる時代到来か
国交省が「軽乗用車」の活用案を公表

8月はじめに、軽乗用車を利用して軽貨物運送ができるようになる規制緩和案が、国土交通省から公表された。現在パブリックコメントの手続き中だが、予定では10月にも新制度が施行される見込みだ。
これまで軽貨物運送には、軽トラックやバンタイプの「軽貨物車」か、またはバイクの利用が条件とされていた。今後、軽乗用車の利用が可能となれば、利用の場面が当然広がるため、運送業界に大きな影響を与えることが予想できる。そこで本稿では、この規制緩和の背景と今後の影響について考えてみたい。
なお、現在はパブリックコメント募集の段階であるため、以下の内容は現段階での筆者(久保田精一、物流コンサルタント)の想定を含むことをご留意いただきたい。
宅配貨物の急増とラストマイルの人手不足

規制緩和の背景は、ひとことでいうと
「宅配貨物の急増」
だ。
通販需要の拡大で宅配貨物は年々増加しているが、近年はコロナ禍の影響によって、伸びにさらに拍車がかかっている。このような急拡大によって「宅配クライシス」とも言われるように、「モノが運べない」状況に陥っているのは周知の通りだ。
宅配貨物の主な担い手は、ヤマト運輸などの物流事業者と郵便会社だが、各社ではドライバーの新規雇用で「宅配クライシス」に対応しようとしている。しかし、そもそもドライバーのなり手である若年労働者が減少していることから、計画通りに増強が進んでいない。
このような状況に対し、一部の荷主は「自社配送」を拡大することで対応しようとしている。
例えばアマゾンでは、「アマゾン・フレックス」という、ウェブマッチングのシステムを導入し、宅配貨物を個人ドライバーに直接委託する取り組みを拡大している。アマゾン・フレックスはアメリカ本国ではかなり拡大しているようだが、日本ではさまざまな規制により広がりに欠けているのが現状だ。
周知のとおり日本ではドライバーが勝手に運送業を始めることはできず、あらかじめ
「貨物軽自動車運送事業」
の開業を届け出る必要がある(自転車での運送を除く)。
届け出自体はそれほど難しくないが、軽貨物車が用意できることが最低限の条件になる。多くの場合、車両を新規購入する必要があるため、副業的に始めることが難しいことが、広がりに欠けている主な要因だ。