自衛隊も物流業界もどうして今「鉄道」に頼るのか? 根本はまったくもって同じ理由だった
鉄道利用の背景は人手不足

この協同転地演習においては、自衛隊の輸送機や輸送艦だけでなく、JR貨物による鉄道輸送や民間のフェリーなども使用して行われている。国土交通省の検討会で出された資料によると訓練では装甲輸送車や155mmりゅう弾砲のような装備が輸送されていたが、2017年からは弾薬や補給品を、コンテナで輸送していることが公表されている。
2020年4月からは、各駐屯地から全国の演習場への資材や機材輸送での鉄道利用を本格化させ、隅田川から札幌と鳥栖へ向かう2路線で週に往復2便の定期便を利用するとしている。ここでは、途中の駅で積み下ろしをしながら、訓練で使う資機材や隊員の食料などを運ぶとしている。
このように自衛隊は鉄道輸送を本格的に利用しているが、その背景にあるのは
「人手不足」
の問題だ。もちろん、鉄道は災害時でも機能しており、複数の手段を用いることで確実に輸送するという目的があることは言うまでもない。
自衛隊が活動をするためには、装備や補給品を迅速に輸送する必要がある。しかし、そのための装備を自衛隊だけでそろえるのは難しいのが現状だ。防衛省の統計によると、2020年3月31日の時点で、自衛隊の充足率は91.6%となっている。過去数年の防衛白書を見ると、充足率は9割以上で推移している。ウクライナにおける戦争や中国の脅威への対応などを踏まえ、防衛費の増額へと動き出しているが、隊員数を大幅に増加させることは難しいのが現状であろう。
こうした中で自衛隊が行っているのが、任務の効率化、つまり民間でできることは民間でするということだ。装備品の操作など、隊員でないと行えない任務以外は民間に任せることで、任務の効率化を図っているのである。何人もの隊員をトラック輸送に従事させるのならば、貨物列車を使った方がはるかに効率的という訳だ。
物流の現場でも、トラックから鉄道輸送へと切り替えることで、人手不足を補おうとしているが、自衛隊も実情は同じなのである。