国鉄時代の大借金、いまだ完済されず! そして今度はローカル廃線問題、次の負担先はいったいどこだ?

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国土交通省が、赤字ローカル線の廃止・バス転換に向けた議論を後押ししている。この動きのなか、改めて注目されているのが、国が鉄道に割く予算の少なさと残された国鉄債務の問題だ。

膨れあがった債務

国労、動労のスト突入で駅構内に張られた組合のスローガン。港区の国鉄品川駅。1980年4月撮影(画像:時事)
国労、動労のスト突入で駅構内に張られた組合のスローガン。港区の国鉄品川駅。1980年4月撮影(画像:時事)

 この補填のために使われたのが、政府の財政投融資からの借り入れと鉄道債券だった。この債務が積もり積もって、国鉄分割民営化時点では長期債務の総額は

「約37兆円」

まで膨れあがった。

 このうち、JR東日本・JR東海・JR西日本の3社が合計約6兆円を、新幹線鉄道保有機構が約5兆5000億円を引き受けた。

 残りの約25兆5000億円は、国鉄清算事業団の引き受けとなった。一部はJRが引き受けたものの、あくまでJRは、国鉄とは連続性を持たない新会社だ。そのため債務の返還と余剰人員の就職あっせんを担う特殊法人として、清算事業団が設立されたのだ。清算事業団は政府の方針に基づいて債務を処理するための組織だったが、結局のところ、国民が約25兆5000億円の借金を背負わされた。

 前述の通り、この債務は

「郵便貯金」
「国民年金」

などを運用する財政投融資と、政府が保証した鉄道債券だ。

 前者は、将来の郵便貯金の金利や年金の原資である。後者は、政府の信用によって購入されているものだ。そのため、破綻は不可能だった。そんななか、清算事業団では債務をできる限り減らすことが目的とされた。債務が減れば、残りは一般会計予算で処理する方針が採られたためだ。当初の予定では1998(平成10)年度から一般会計予算で処理することになっていた。

 債務を減らす手段としてもっとも有望だったのが、国鉄の所有していた遊休地の売却だ。

 分割民営化頃、その公示価格は約7兆円。そこにバブル景気の追い風が吹き、土地の価格は跳ね上がった。このときに売り抜けていれば、債務は大幅に解消できた。しかし当時、政府内では地価高騰をあおるとして、売却に反対する意見が多かった。そして、バブル景気が崩壊すると、一転し価格は下落。買い手もつかない状況になり、精算計画は完全に破綻した。

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