函館線「長万部~函館」存廃問題 もはやJR貨物の手に負えず、国も自治体も膨大赤字にダンマリの現実
在来線を残すのか、廃止するのか――。北海道新幹線の札幌延伸を前に、JR北海道から経営分離される長万部~函館間の存廃が問題となっている。
血気盛んな長万部町と並行在来線の危機
在来線を残すのか、廃止するのか――。北海道新幹線の札幌延伸を前に、JR北海道から経営分離される長万部~函館間の存廃が問題となっている。
長万部駅のある長万部町は、過剰なまでに新幹線へ期待を掛けている。延伸が具体化した2006(平成18)年には早くも駅周辺整備構想を策定。その後、
2016年:新幹線を核としたまちづくり実行計画
2017年:新幹線駅周辺整備計画
がまとまっている。
これによれば、高架駅となる長万部駅では2面4線のホームが建設予定だ。加えて、在来線の2面4線のホームも存置されると見込まれている。そんな巨大な駅が建設されるのも、長万部駅が日本海側も含んだ地域の中心駅となることが構想されているためである。
地域のハブとなることをもくろむ長万部町だが、見通しは決して明るくはない。なぜなら、並行在来線の維持が危ぶまれているからだ。長らく存廃が問題となっていた長万部~小樽間は、2022年3月に開かれた沿線9市町と道による協議会で、バス転換が決まった。
これに続いて議論の対象となっているのが、長万部~函館間の存廃だ。JR貨物の小暮一寿・北海道支社長が2022年5月、第3セクターなどを想定した鉄路の維持を求めたが、議論は停滞したままとなっている。
長万部~函館間は、1日に40本あまりの貨物列車が運行されている。いわば、北海道と本州を結ぶ貨物の「大動脈」だ。旅客は赤字(2018年度で約57億円)だが、JR貨物から
・線路使用料
・貨物調整金
が支払われ、鉄路は維持されてきた。
長万部~小樽間がバス転換で妥結したのは、この区間には貨物輸送が行われていなかったことも理由として挙げられる。