国鉄時代の大借金、いまだ完済されず! そして今度はローカル廃線問題、次の負担先はいったいどこだ?
国土交通省が、赤字ローカル線の廃止・バス転換に向けた議論を後押ししている。この動きのなか、改めて注目されているのが、国が鉄道に割く予算の少なさと残された国鉄債務の問題だ。
国鉄の債務はなぜか「たばこ」に
1997(平成9)年に政府・与党の財政構造改革会議が開催された時点で、旧国鉄の債務は
「約28兆円 + 金利」
になっていた。なお、有利子の債務は約15億円。毎年の金利は6600億円だった。
この処理は紛糾したが、1998年10月に旧国鉄債務処理法が成立。ここで「新たな国民負担」として提案されたのが、たばこ1本あたり1円の税金を引き上げる
「たばこ特別税」
だった。1998年当時で日本たばこ産業(JT)のたばこ販売量は、年間約2500億本である。ここから入る税収を、国鉄債務に充てた。
こうして、1998年12月から、たばこは1箱あたり20円が値上げ、1本あたり0.82円の税金が上乗せされ、国鉄と国有林野事業の債務処理に充てられることになった。
当時は、既に健康が意識されている時代。嗜好(しこう)品ならば反対意見が少ないとみられ、
「鉄道とはまったく関係ない」
たばこから国鉄の債務を負担することになったわけだ。
この時点で、債務の返済まで60年が予定されていたため、喫煙者は現在も
「国鉄の債務を支払っている」
ことになる。
今では、政府も自治体も禁煙を促進しているが、喫煙者が減るほど国鉄の債務返還計画も狂う――という、奇妙な状況が続いている。
いまだに債務が処理できない時点で、国鉄分割民営化は大失政だった。国鉄債務の原因のひとつである新線建設を止めなかった国が、今度は廃線を促進するルールづくりに着手しているのが、現在の姿なのだ。
いったい、今度はどこに負担を押しつけるのか?