中国の「EV支配」はまだまだ遠い 現地メーカーでエンジン開発に携わった識者が語る、中国の「2つの弱点」

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中国EV大手BYDは7月21日、日本の乗用車市場への参入を発表した。今後、中国が世界のEV市場を主導する日は来るのだろうか。

中国は世界のEV市場を支配するか

中国の電池交換ステーションと運営企業別の内訳(画像:中国日本商工会)
中国の電池交換ステーションと運営企業別の内訳(画像:中国日本商工会)

 中国の自動車市場の規模は世界最大となり、質も飛躍的に向上した。新技術や新ビジネスモデルに対する政策的な支援もあり、世界市場を支配するのではないかと考える人もいるだろう。しかし、その日が来るとしてもずっと先のことだろう。

 筆者(大庭徹、技術開発コンサルタント)が中国民族系自動車会社で3年間、新エンジン開発を主導した経験から、その理由をふたつ述べる。

 まず、「多くの外国人専門家への依存」だ。はっきり言って、自主開発には程遠い。BYDジャパンの東福寺厚樹社長も、欧州技術支援の絶大な効果を語っている。

 次に「技術開発への取り組み姿勢」だ。中国は結果を重視するため、技術開発の本質である、結果を導き出す

「プロセス」

にあまり興味を持たないエンジニアが多い。

 だが、決して油断してはいけない。海外からの技術支援は諸事情で減少するかもしれないが、無くならない。また、14億の人口ゆえ、優秀な人材は多く、スタートアップ企業の中から真の技術開発能力を獲得する企業が誕生しても不思議ではない。

 リチウムイオン電池は、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏が開発し、研究段階で大きく先行したが、量産段階でコスト低減に成功した中国や韓国企業にシェアを奪われた。日本はこの反省を生かして、全個体電池等の技術イノベーションと、お家芸である持続的な「KAIZEN」により、再び差を広げることはできるか。

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