中国の「EV支配」はまだまだ遠い 現地メーカーでエンジン開発に携わった識者が語る、中国の「2つの弱点」
中国EV大手BYDは7月21日、日本の乗用車市場への参入を発表した。今後、中国が世界のEV市場を主導する日は来るのだろうか。
EV保有台数の推移と充電インフラの現状

EV(BEV+PHEV)が増えると、充電インフラの増設が必要となる。そこでまず、2010年~2021年の世界のEV保有台数の推移を見てみよう。
2018年以降、中国、欧州と米国ではEVが急増し、2021年には世界保有台数が1650万台に達したが、2021年の販売シェアは8.3%にすぎない。欧州ではBEVよりもプラグインハイブリッド車(PHEV)の伸びが大きい。2035年以降のPHEVも含む、エンジン車販売禁止の実質決定を受けて、PHEVの需要がさらに増加し、BEVを上回る可能性もある。
充電用インフラ設置状況の推移

次に、充電用インフラ設置状況の推移だ。左図は1充電ポイント当たりの小型EV台数の推移で、数字が小さいほどインフラの充足率が高い。ノルウェーではEVの増加に充電ポイント増設が追い付いていないが、エンジン車のブロックヒーター用コンセントが流用できるため、一戸建て住宅の充電器設置率は高い。
米国では、テスラが「スーパーチャージャー」と称する自社専用急速充電ネットワークを間もなく他社EVユーザーにも開放する予定だ。さらに、バイデン政権はEV充電器の国内生産に向け、7億ドル超の民間投資計画を公表し、改善を進める。
2021年における中国のEV保有台数は800万台に迫り、充足率は世界平均より高い。にもかかわらず、2021年の国慶節連休では、高速道路のサービスエリアの充電渋滞で4時間もの待ち時間が発生し、これがEVを敬遠させた。
今後のEV増加に備えた充電インフラの先行増強が、世界各国の大きな課題と言える。