京葉線新駅「幕張豊砂」来年春に開業 白紙寸前の建設計画を甦らせた小売最大手の政治力とは
イオンモール出店で動いたJR東日本

注目すべきは、まずはイオンが新駅設置に対し、気前よく費用の半分を持った点だろう。同社の“総帥”で、現・名誉会長の岡田卓也氏は
「出店はキツネやタヌキが出る場所で」
が口癖だ。
不動産取得にかかるコストを極限まで抑えるため、駅前や繁華街など地価の高い場所はなるべく控え、郊外やさらには地方の「バイバスが通る田園地帯」を好んで出店するのがイオンの出店戦略だ。
これを考えれば、豊浜地区はバブル崩壊の波をもろに受け企業誘致計画が頓挫した場所で、まさに「ペンペン草が生える」荒れ地そのものだ。出店に際し、イオン側が千葉県から相当有利な条件を引き出したことは間違いないだろう。
加えて出店にあたり、事実上「ショッピングモール専用駅」の新設にも結果的には成功するのだが、前述のように郊外やバイパス沿いのいわゆる「ロードサイド型」をイオンは好むだけに、新駅建設に自ら費用を負担する例は珍しい。逆に新駅開業後に、駅前にこれだけ広大な商業施設を確保しようとした場合、取得費用は恐らく現行の数倍では済まなかったはずだ。これを考えれば岡田卓也氏の「口癖」を忠実に従った出店計画とも言える。
また前述のように、請願駅に対してJR東日本は受益者負担を大原則とし、当初は費用負担を拒否していたものの、イオンモール出店を機に「収益が見込める」と算盤を弾き、一部負担へと転じた点も特筆だろう。
加えて、2020年7月に新駅の工事が本格スタートしたわけだが、当初4年後の2024年の開業を予定していたものの、JR東日本が施工計画を見直した結果、工期を約1年短縮できると判断し、2023年春開業へと前倒しにした点も見逃せないだろう。この種の公共工事は遅れることがあっても、1年も工期が縮まることは稀だ。
これにより、新駅工事にかかる事業費は当初見積もりの約130億円から10億円程度節約できるのでは、と見られている。