JAL、3000人配置転換の衝撃 「LCC」「マイル事業」へのシフトは成功するのか? 背景に迫る

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JALが、自社の従業員約3000人をLCCやマイル事業などに配置転換する。その背景ににはいったい何があるのか。

「LCC」「マイル」事業とは

「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画 ローリングプラン2022」より(画像:JAL)
「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画 ローリングプラン2022」より(画像:JAL)

 JALの従業員数はグループ全体で約3万6000人だ(2021年3月時点)。今回明らかになった約3000人は、全体の1割弱にあたる。報道による記事の見出しには「LCC」「マイル事業」と出ている。

 まず、JALが関わるLCCは現在3社ある。「ZIPAIR Tokyo(ジップエア)」は日本初の中長距離国際線LCCで、アジアと北米に路線網を持つ。中国系LCC「春秋航空日本」(現在の名称はスプリング・ジャパン)は、JALが2021年6月に連結子会社化した。さらに、日本就航10年の「ジェットスター・ジャパン」では提携を維持しつつ、機材数や路線の見直しなどを行いながら競争力強化を目標に掲げる。

 特に、ジップエアとスプリング・ジャパンで事業規模拡大とともに積極的に機材を増やすことを2022年5月、「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画 ローリングプラン2022」で発表済みだ。2020年度はジップエアのみ2機だったのを、2025年度にはスプリング・ジャパンと合わせて18機を見込む。

 一方、JALではマイル事業を、今後の成長分野と位置付けている。飛行機に搭乗するだけでなく、日常生活の買い物や住宅ローンなどでもマイルがたまる。これを活用する「マイルライフ構想」を推進し、利益を倍増させる目標を掲げる。

 この一環として、空港での販売店やネット通販、保険事業などを行う商社「JALUX」を、2022年3月に連結子会社化。地方の自治体や企業と共同で行う地域産品の販路拡大、さらにドローン事業の実証なども展開していくという。

5月に発表していた「成長領域への人財配置」

「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画 ローリングプラン2022」より(画像:JAL)
「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画 ローリングプラン2022」より(画像:JAL)

「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画 ローリングプラン2022」のなかで、JALは事業戦略として「フルサービスキャリア」「LCC」「貨物・郵便」「マイル・ライフ・インフラ」の四つの領域を掲げている。

 JALはコロナ禍の前にフルサービスキャリア、貨物・郵便で売り上げの70%を占めていたのを、2025年度には55%程度とする。そして、新たにLCCを10%、マイル・ライフ・インフラを30%から35%に上げている。これまで主力だったJALブランドの航空事業への依存を減らし、LCCに加えてマイル・ライフ・インフラという主力航空事業以外を今後強化する姿勢を打ち出した。

 さらに、JALはこのローリングプランで「成長領域への人財配置」として、2025年度までに3000人増やすことも掲げていた。今回の報道での数字と一致するものの、発表当時は自社の従業員の配置転換とは明記していない。

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