「派遣トラックドライバー」は物流危機を救えるか? サポート体制は年々強化、かつては数日で逃げ出すことも
派遣ドライバーをめぐり良からぬ事例も
知己の運送会社では、以前、人材派遣会社によるトラックドライバー派遣を利用し、手痛い目にあったことがある。
その派遣ドライバーは、勤め始めて数日後、突然逃げ出したのだ。
派遣先の運送会社は、配送先から「まだ荷物が届かない」との連絡を受け、初めて問題の派遣ドライバーが逃亡したことを知った。
当人に電話をしても電話に出ないため、同社ではトラックに搭載したデジタコのGPSデータを確認した。すると、高速道路のサービスエリア上にトラックがあることがわかった。たまたま近くにいた別のトラックを向かわせたところ、トラックはエンジンキーを付けたまま、サービスエリアに放置されていた。
困ったのは、貸与したETCカードを持ち逃げされたことだった。
運送会社は人材派遣会社に連絡し、当人からの釈明と、ETCカードの回収を求めた。だがいくら待っても、人材派遣会社は当人と接触できず、結局ETCカードも回収できなかったそうだ。
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トラックドライバー不足が深刻化する中、新たなドライバー確保の手段として注目されつつある、人材派遣会社による「ドライバー派遣」。この仕組みは果たして、運送業界の救世主となるのか?
お叱りを承知で言えば、筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)は前述の事例を知っていたため、ドライバー派遣に関してネガティブな印象を持っていた。
今回取材を進めるに当たり話を聴いたランスタッド 福島大輔氏には、そのことを隠さず伝えた。
「派遣ドライバーと言えど、同じマーケットから調達された人々です。ですから、人の質は変わりません」
ただし…、と念押しした上で、福島氏はこのように続けた。
「派遣会社によって、『労働力として垂れ流すケース』と『クライアントと派遣される人に寄り添うケース』があるのは、残念ながら現実です」
考えてみれば、運送業界に限らず、また派遣に限らず、正社員であろうと、このような無責任な行動を取る人はいる。
では、福島氏の言う「クライアントと派遣される人に寄り添う」とはどういうことなのか、おいおい解説していこう。