MaaSだけじゃない! 鉄道会社の相次ぐ「異業種参入」 今後注目2つの事業とは
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活発化する鉄道会社の異業種参入

鉄道会社の異業種参入が活発化している。
大手鉄道会社が2021年度に公表した中期経営計画や決算概況など(JR6社と大手民営鉄道のうち売上高上位8社を対象)によれば、シェアオフィスの拡充、シームレスな交通サービスの構築を目指すMaaSビジネスへの進出が活発だ。
これらは、保有するアセット(資産)と既存事業の周辺領域への進出だが、注目すべきなのは、新しい事業領域への進出も多くみられることだ。
例えば、沿線利用者が券売機で現金の引き出しができるキャッシュアウトサービス、エネルギー小売り、沿線の居住者向け生活コンシェルジュサービス等だ。
過去に目を向けてみると、大手鉄道会社による多角化経営(=異業種参入)の歴史は長い。沿線における付加価値提供のために、住宅・店舗を含むまちづくりや、ホテル・レジャー施設の経営などを行ってきた。沿線人口の増加や沿線利用者の拡大が狙いだ。
一方、先述のような近年の新規事業展開の動向をみると、鉄道を利用するかどうかに限らず、人々のくらしをより豊かにすることを目指しているように見受けられる。鉄道会社にとってみれば、まさに新たな価値創出を志向した取り組みが加速している、と言えるだろう。
参入背景にある経営環境の変化

この背景には、運輸事業を取り巻く厳しい経営環境変化がある。
以前より人口減少(図)を念頭にはおいていたが、コロナ禍により鉄道による移動需要は減少し、特に通勤・出張に関してはワークスタイルの変化が定着化し、一部需要は消滅したものと考えられる。今や鉄道会社は待ったなしで、運輸事業の構造改革と経営の柔軟性向上を推し進めていかなければならない。
構造改革の一環として、運賃の見直し、減便、終電の繰り上げなど、利用状況に応じたサービスの見直しが進められている。さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)も加速している。DXは
・チケットレス化
・ワンマン/自動運転の拡大
・モノのインターネット(IoT)
など、テクノロジーを活用した予防保全・予知保全(CBM・スマートメンテナンスなど)などの領域で進められ、さらなる生産性向上が目指される。
経営の柔軟性向上はどうか。非運輸事業(=異業種参入)による、新たな成長事業・成長分野の創出がその鍵だと考えられる。