MaaSだけじゃない! 鉄道会社の相次ぐ「異業種参入」 今後注目2つの事業とは

キーワード :
鉄道会社の異業種参入が活発化している。シェアオフィスの拡充、シームレスな交通サービスの構築を目指すMaaSビジネスへの進出が顕著だ。

異業種参入のトレンドとは

JR・鉄道各社の異業種参入事例(画像:酒井雅江)
JR・鉄道各社の異業種参入事例(画像:酒井雅江)

 では、近年の鉄道会社による異業種参入の事例にはどのようなトレンドがあるのだろうか。

 筆者(酒井雅江、ビジネスコンサルタント)は、

・進出先業界の業法改正への対応
・社会動向の変化への対応

のふたつに大きく分類できると考える。

 まず、進出先業界の業法改正への対応として、キャッシュアウト事業やエネルギー小売り事業が挙げられる。

 キャッシュアウト事業では、銀行法の改正を受け、沿線利用者が券売機で現金の引き出しができる仕組みの構築と展開を図っている。また、エネルギー小売り事業では、電力事業への市場参入規制の緩和(電力自由化)を背景に、沿線顧客に対して自社のポイントサービスや他生活サービスを組み合わせた事業展開を行っている。

 次に、社会動向の変化への対応として、

・MaaS推進事業
・シェアオフィス事業
・個人向けコンシェルジュサービス

が挙げられる。

 MaaS推進事業では、都市部における渋滞問題や環境問題、高齢化・過疎化する地方部の交通弱者の問題などを見据え、鉄道会社がタクシーやバスなどの他運輸事業者と連携したシームレスな交通サービスの検討・展開を進めている。

 シェアオフィス事業では、社会全体の働き方改革の推進を受け、遊休資産などを活用したシェアオフィスの設置による沿線価値の向上と事業機会の創出の場の提供を行っている。

 また、個人向け生活コンシェルジュサービス事業では、単身世帯・共働き世帯の増加や高齢者の増加等を背景に、沿線居住者に対し家事代行等の生活周りのサポートや、相続や高齢者生活支援といったシニアサポートまで幅広い世代に向けた生活支援サービスの提供を行っている。

 このような異業種参入のトレンドに加え、いずれも、鉄道会社が所有するアセットにデジタルを融合することで、事業の実現性を高め、新規収益獲得への寄与を企図している(図)。

全てのコメントを見る