インドネシア新首都建設 移転先の「カリマンタン島」を巡る鉄道計画をご存じか

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インドネシアの首都がジャカルタからカリマンタン島に移転する。法案も国会で可。今後、同国はどのように変わるのだろうか。

一獲千金で各国虎視眈々

国鉄(KAI)の駅入り口にある駐車場のゲート(画像:高木聡)
国鉄(KAI)の駅入り口にある駐車場のゲート(画像:高木聡)

 インドネシアの鉄道プロジェクトと言えば、政府は総じて国産品調達率4割を求めているが、PPP方式なら、高速鉄道の前例からしてこの限りではないものと思われる。そもそも先進技術を多用するならば、国産品を使用するのはほぼ不可能であるし、国営車両製造会社(INKA)独自では製造できない。他国からのシステム一式の導入なしは、技術協力は避けられないだろう。

 先述の通りヌサンタラでは、鉄道のほか、BRT、無人バスなど、さまざまな交通モードが組み合わされる。水上バスや水陸両用車の導入も検討されており、もし、これらが実現すれば、乗り物好きにはたまらない都市になる。

 問題は、次期選挙戦次第では、これが絵に描いた餅で終わってしまう可能性があるということだ。ソフトバンクが投資を撤回したように、インドネシアが本気度を見せなければ、そう簡単に民間資金調達などできない。

 ただ、これが実現すれば、一獲千金のチャンスでもある。中国、韓国、フランス、ドイツと言ったおなじみの面々が虎視眈々(たんたん)と狙っていることは容易に想像がつく。また、都市国家運営の一日の長があるシンガポールが名乗りを上げるかもしれない。残念なのは、政府開発援助(ODA)の円借款(経済援助のために、日本政府が政府間の合意に基づいて行う円建ての低金利融資)供与という形にこだわる日本に参画の余地が無いということである。日本とインドネシアは戦後賠償に始まる長い付き合いであり、インドネシアは日本最大の円借款被供与国である。

 今回の首都移転に関して、完全にはしごを外されている格好だが、2045年の先進国入りを目指した意思表明とも言えそうだ。首都移転は段階的に約20年かけて実施されるが、果たして将来、どんな都市ができるのか、楽しみである。

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