インドネシア新首都建設 移転先の「カリマンタン島」を巡る鉄道計画をご存じか

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インドネシアの首都がジャカルタからカリマンタン島に移転する。法案も国会で可。今後、同国はどのように変わるのだろうか。

なぜ首都を移動させるのか

高架化され駅舎が綺麗になっても駅前は以前と変わらないマンガライ駅(画像:高木聡)
高架化され駅舎が綺麗になっても駅前は以前と変わらないマンガライ駅(画像:高木聡)

 そもそも、現在の首都ジャカルタを、莫大(ばくだい)な資金を投じてまで約2000km弱離れた土地へ移転するのはなぜなのか。

 首都移転は、洪水・渋滞・人口過密、それにジャワ島への一極集中(インドネシアの国土の6%のジャワ島に人口の50%近くが集中している)という課題を解消するためとして、一般的に紹介されている。

 しかし、これだけでは説明不足である。洪水・渋滞・人口過密のいずれも、正しい対策を打てば、現在のジャカルタでも解消することは十分可能である。まともな下水道が無く、側溝も機能していないところに雨が降り注げば、当然、窪地は池になる。幹線道路はオランダ植民地時代に形作られて以来、ほぼそのままである。

 1週間も住んでいれば、地図が書けてしまう程、ジャカルタの幹線道路は少ない。それ以外は、住宅地を縫うように走る裏路地である。人口過密による住宅不足、価格高騰も問題だが、低層住宅があまりにも多いことが根本要因である。

高層アパートの裏には昔ながらの下町

高層ビルのそびえる煌びやかなジャカルタ中心部だが、その裏には都市カンプンと呼ばれる低所得者も多い集落が広がっている(画像:高木聡)
高層ビルのそびえる煌びやかなジャカルタ中心部だが、その裏には都市カンプンと呼ばれる低所得者も多い集落が広がっている(画像:高木聡)

 今のジャカルタをわかりやすく言うならば、1960年代の東京と言ったところで、高層ビル、高層アパートメントが乱立するエリアがある一方、その裏手には、行商人が練り歩く、昔ながらの下町(都市カンプン)がどこまでも広がっている。

 問題なのは、土地の利権関係が複雑に絡み、本来の所有者が誰かわからないことも多く、行政主導で、ジャカルタの既成市街地の再開発、そして社会インフラの整備がほぼ不可能なことである。

 民主化以降、特に難しくなったと言われている。華人系、軍閥系企業などが土地を買い上げ、不動産開発する例はあるが、あくまでもピンポイントであり、周辺地区との調整、アクセス道路整備はほとんど含まれていないため、ますます渋滞を悪化させるという悪循環に陥っている。