なぜドライバーの「9割超」は日常点検を行わないのか? 車の状態が見えにくくなる現代、広がる新しい点検とは

キーワード :
,
EVシフトによる車重増でタイヤ負荷が高まるなか、日常点検の実施率はわずか9.5%にとどまり、街のタイヤの28%に整備不良が見つかるという危機的な実態が浮かび上がった。人手不足に悩む整備現場のサバイバルと足回りの安全をかけ、最新AIやクラウドを活用した診断体制の主導権争いが本格化している。

タイヤ整備不良28%の実態

タイヤ(画像:写真AC)
タイヤ(画像:写真AC)

 2025年6月、日本自動車タイヤ協会(東京都港区)は、全国7か所で乗用車系86台、貨物系8台、合計94台を対象に実施した2025年「4月8日 タイヤの日」タイヤ点検の結果を公表した。

 その結果、タイヤに整備不良が見つかったのは26台で、割合は28%となった。車種別では乗用車系が86台中23台で27%、貨物系が8台中3台で38%だった。不良の内訳は、空気圧不足が23%(乗用車系22%、貨物系38%)、外傷が2%(乗用車系2%)、その他が3%(乗用車系4%)である。いずれも日常の点検で気づける内容が多い。

 空気圧不足が一定の割合で見つかっている点は見逃せない。背景には、街のガソリンスタンドがセルフ式へ移行し、人手による確認の機会が減ってきたことがある。かつては給油の際に無料の安全点検が行われることが多く、日常的に車の状態を確認する場になっていた。しかしそうした機会が減り、点検の責任が利用者側により強く移る形になっている。今回の整備不良の数字は、その変化を反映しているともいえる。

 さらに、貨物系で不良の割合が高い点はより深刻である。運送の現場では、時間や費用の制約が強まり、日々の運行を優先せざるを得ない状況が続いている。その結果として、車両の足回りの点検や整備に十分な手間をかけにくくなっている。これは物流の現場が抱える負担の大きさを示しており、今後の運用にも影響を及ぼす可能性がある。

EVシフトにともなう足回りの負荷

2025年の全国7か所におけるタイヤ点検結果(画像:日本自動車タイヤ協会)
2025年の全国7か所におけるタイヤ点検結果(画像:日本自動車タイヤ協会)

 しかし、実際にタイヤの状態を確認しているドライバーは少ない。自動車点検整備推進協議会が2024年2月に公表した「2023年度自動車点検整備推進運動アンケート調査(モニタス実施、18~69歳男女2000人)」によれば、乗車前に日常点検を行っている人は9.5%にとどまる。この低い割合は、車の品質向上で故障が起きにくくなり、利用者の関心が下がったことの影響と考えられる。加えて、車の中身が電子化でわかりにくくなり、点検の必要性を感じにくくなっている面もある。

 近ごろの車は、ハイブリッド車(HV)やバッテリー式電気自動車(BEV)の広がり、大きな電池の搭載によって車重が増え、タイヤのすり減りや劣化が安全に直結するようになっている。より細かな確認が求められているが、多くの整備現場では、今も溝の深さを測る道具による手作業や、整備士の経験に基づく判断が中心だ。

 一方でBEVは床下に重い電池を積むため重心が低く、曲がるときにタイヤへ横向きの力が強くかかる。さらに、電気モーターの強い力が一気に伝わることや、減速時の回生ブレーキによる負荷も無視できない。

 こうした条件が重なることで、すり減りが早くなるだけでなく、見た目ではわかりにくい一部の溝や外側だけが減る偏った摩耗も起きやすい。人の目や従来のやり方だけでは、この変化を見落とす可能性があり、タイヤの破裂や電費の悪化を事前に防ぐのが難しくなっている。

 こうした状況のなか、2025年3月にパーソナルAVCテクノロジー(大阪府高槻市)が「AIみぞみるくん」を発売した。手軽にタイヤの状態を確認できるとされるが、こうした機器が現場にどのような変化をもたらすかが注目される。

全てのコメントを見る