なぜ品川駅の女子トイレには「11枚」の貼り紙が並んだのか? 海外3000万人分析が突きつけた人流管理の変化とは

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3年間で3000万件の歩行データを分析した最新研究が、駅インフラの常識を覆した。乗客は案内表示ではなく、前を行く見知らぬ他者に無意識に追従しているという。過密ダイヤの遅延リスクや駅ナカ店舗の賃料格差に直結する不合理な群衆心理を解き明かし、従来の施設拡張に頼らない新たなインフラ経営の針路を展望する。

歩行心理による商業価値の偏在

オランダ(画像:Pexels)
オランダ(画像:Pexels)

 毎日、何百万人もの人々が繁華街や空港、サッカースタジアム、駅などで見知らぬ者同士の群衆をつくっている。しかし、その集団の中で人と人との関わりが行動の選択にどのような影響を与えているのかは、これまで十分に注目されてこなかった。そこで研究チームは、オランダのアイントホーフェン中央駅の3番線と4番線で、3D立体画像を用いた歩行者追跡システムを導入し、他人の存在が意思決定に与える影響を調べた。

 頭上のセンサーが捉える範囲は駅構内の約1400平方メートルに及び、歩行者の動きを毎秒10フレームのデータとして記録する。2021年3月から2024年3月までの3年間で、合計3000万件を超える移動軌跡が集められた。

 この改札内の空間は、鉄道事業者にとって収益を高めたい重要な場所である。しかし、高精度なデータによって明らかになったのは、乗客が周囲の店舗に目を向けることなく、前を歩く人の流れに従って通り過ぎてしまう場所の存在だった。これまで駅ナカ商業の賃料は、

「改札の通過人数」

を基準に決められることが一般的だったが、今回の結果は異なる実態を示している。歩行中の心理的な影響によって、人が集まる店舗とそうでない店舗が生まれ、わずかに場所が違うだけで価値に大きな差が生じるためだ。この結果は、今後の賃料の考え方にも影響を与える可能性がある。

 なお、今回の調査は見知らぬ人から受ける影響を明らかにすることを目的としているため、同じ速さで同じ方向へ歩くふたり以上のグループは分析対象から除外された。個人で移動する歩行者に絞ることで、人の行動傾向を詳しく調べた形だ。

 ひとりで歩く乗客は自分の判断で動けるはずだが、混雑した場所では周囲の歩調に合わせて速度や進行方向を変えざるを得ない。まっすぐ進みたくても他人に行く手を遮られることもある。最短経路を把握していても、流れの遅い人混みを避けて別の道を選んだり、前を歩く人についていったりする場面は、日々の通勤でもよく見られる。

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