「中東で何かが起きるたび、利益が消えていく」――運送会社の54%が運賃を上げられない現実、しわ寄せはどこまで広がるのか?

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燃料高騰が物流を直撃するなか、運賃を十分に転嫁できている企業は9.6%にとどまり、9割超が負担を抱え込む。272社調査では約9割が存続に危機感を示した。問われているのはコスト増への対応ではなく、価格を決める力そのものだ。

制度整備と現場運用の断絶

中東情勢悪化による燃料費増加が運送業界へ与える影響に関する調査(画像:CUBE-LINX)
中東情勢悪化による燃料費増加が運送業界へ与える影響に関する調査(画像:CUBE-LINX)

「標準的な運賃」の告示など取引適正化の枠組みは整いつつあるが、現場の体感温度は低い。本調査で同制度を知らない経営者が11.2%に上り、交渉人員の欠如も指摘されるなど、ルールを実務で使いこなす力が不足している。運行管理に強みを持つ一方で、法的な裏付けを盾に荷主と渡り合う知見や、契約管理体制の整備が後手に回ってきた。

 国が定めたルールは、受動的に守られるのを待つものではなく、不条理な取引条件を撥ねのけるために自ら振るうべきものだ。法的知識を現場の交渉力へと昇華させることが、運送経営の喫緊の課題といえる。

 燃料価格の上昇は、皮肉にも脱炭素への経済的な誘因を強める。これまで重荷と見なされたEVや省エネ車への投資は、エネルギー価格の乱高下から身を守る現実的なリスク回避手段へと意味合いを変えた。しかし、手元の資金繰りや収益見通しの不透明さが投資の障壁となっている。目前のコストを転嫁できない状況は、将来の環境負荷への課税に対しても無防備であることを示唆する。環境コストを正当に価格へ反映させる力を養うことは、産業としての自立に直結する。

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