「中東で何かが起きるたび、利益が消えていく」――運送会社の54%が運賃を上げられない現実、しわ寄せはどこまで広がるのか?
燃料高騰が物流を直撃するなか、運賃を十分に転嫁できている企業は9.6%にとどまり、9割超が負担を抱え込む。272社調査では約9割が存続に危機感を示した。問われているのはコスト増への対応ではなく、価格を決める力そのものだ。
運賃不可視化と負担偏重の固定

閉塞感の背景には、「送料無料」を当たり前とする社会の期待がある。商品代金に運賃が埋没する仕組みは配送コストを不可視化し、燃料価格が跳ね上がってもその痛みは消費者に届かない。この情報の遮断が、荷主による運賃引き上げ拒絶を招いている。
物流を「無償でいくらでも使えるもの」とみなす慣習がサービスの価値認識を弱め、消費者は負担を意識せず、荷主は転嫁を嫌い、運送会社がしわ寄せを背負う構図を固定化した。不利な条件に対して供給を絞るといった組織的な対抗策を講じにくい現状は、日本社会がいかに現場の自己犠牲に依存しているかの証左だ。
物流は維持に相応の対価をともなう有限な資源である。この事実を、費用の見える化を通じて社会全体で共有しなければならない。現場の地道な運用改善は理に適うが、構造的な課題を覆すには至らない。デジタル技術も単なる効率化の道具ではなく、配送ごとの正確な原価を弾き出し、荷主と対等に議論するための武器として位置づけるべきだ。