率直に言う 万博EVバス問題を「一企業の責任」に矮小化するのは間違いだ
整備人材不足の深刻化

政策側は、EVバスの実態を十分に把握できていない面があり、その傾向は現場、特に整備の分野で目立つ。EVバスは従来のエンジン車と整備の内容が異なり、必要な知識や資格の内容も違う。
2024年3月1日に国土交通省物流・自動車局自動車整備課が公表したデータによれば、自動車整備専門学校の入学者数は過去18年で約47%減っている。また、自動車整備士資格の受験者数は、1級から3級を合わせて約3万5000人にとどまり、平均年齢は46.7歳に達している。
こうした流れのなかで、バス事業に進む人材は2024年問題や車の利用形態の変化の影響もあり、さらに減っている。限られた人員に対してEVバスの整備教育を行うには、大きな負担と費用がかかる。
一方で政府は、専門性や技術を持つ人材を対象とする「特定技能制度」と、今後技能を身につける人材を受け入れる「育成就労制度」を合わせ、2029年3月までの受け入れ上限を1万9300人とする案を示している。この制度の対象にEV整備を含めることは、EVバスの普及にとって重要だと考えられる。
実際には、EVMJの車両を運休せずに使い続けている事業者もある。神奈川県の富士急行や箱根登山バスでは、EVバスが日常的に運行に就いている様子が見られる。報道ではあまり触れられていないが、整備の体制が一定のトラブル回避につながっている可能性もある。
鉄道系のバス会社であれば、電車の整備経験を活かせる面がある。一方でバス単独の事業者では、EVバスの整備人材や部品対応の力が現場で不足している可能性が高い。その結果、一部の担当者に負担が集中しやすい状況も考えられる。
こうした状況を踏まえると、整備体制の弱さが、不具合への対応の遅れや運行停止につながった可能性も含めて検討する必要がある。整備という観点が、これまでの政策議論では十分に扱われてこなかった点は否めない。