率直に言う 万博EVバス問題を「一企業の責任」に矮小化するのは間違いだ

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EVバス事業を手がけるEVMJが民事再生法を申請し、負債は約57億円にのぼる。万博向け導入を契機に広がったEVバス政策は、補助金制度や整備体制の遅れも抱え、企業単体では説明できない構造課題を浮かび上がらせている。

万博事業の影響整理

 まず事実を整理する。関西万博の来場者輸送を担った大阪メトロは、安全面への不安から、万博後にこれらの電動バスを路線バスへ転用する計画を取りやめた。これに伴い国土交通省は補助金の返還を求める方針も示している。

 ここで押さえるべき点がある。民事再生は会社を清算する手続きではなく、事業を続けながら負債を整理し、立て直しを目指す仕組みである。債務の減額や返済条件の見直しを通じて資金面を立て直し、採算の取れない事業を見直しながら事業の中心に力を集める形が想定される。さらに、支援企業の関与によって事業継続を図る場合もある。

 実際、再建に向けた動きは具体化しつつある。同社は2026年4月20日、北九州市内で債権者説明会を開き、7月中の事業譲渡を検討していることを明らかにした。譲渡先については、国内外の十数社を候補に選定を進めているという(『西日本新聞』2026年4月21日付け)。

 実務上は、納期の遅れや生産計画の変更、新規受注や投資の抑制、債権の一部放棄などを含む再生計画が組まれることもある。民事再生法はあくまで再建を目指す仕組みだが、関係者の協力が得られない場合や支援の見通しが立たない場合には、破産へ移る可能性も残る。現行の制度上、この状況では補助金の回収も容易ではない。

 本稿を書くにあたり、これまでの報道を改めて整理しておきたい。テレビ、新聞、ネット媒体を通して見ると、主な論点は経営上の問題や企業側の対応のまずさに集中している。一部では、EVMJをめぐる接待や不具合に関する情報管理の問題など、個別の疑惑も取り上げられている。今回筆をとった理由は、日本のバス事業を長く見てきた立場から、現状を広い視野で捉え、「全体の構造として整理した議論」が不足していると感じるためである。現在の報道は「誰に責任があるか」という点に寄りやすく、「なぜこのような状況になったのか」という点には十分踏み込めていない。

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