率直に言う 万博EVバス問題を「一企業の責任」に矮小化するのは間違いだ

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EVバス事業を手がけるEVMJが民事再生法を申請し、負債は約57億円にのぼる。万博向け導入を契機に広がったEVバス政策は、補助金制度や整備体制の遅れも抱え、企業単体では説明できない構造課題を浮かび上がらせている。

政策主導導入の加速

 多くの報道は、EVMJが日本製EVバス、いわゆる「脱中国」を政府に売り込んでいた点を取り上げている。加えて、西村康稔元経済産業大臣が就任当時、「大阪のバス会社が中国製EVバスの導入を進めていたことに危機感を持ち、日本企業製バスの導入を奨励した」と自らのX(旧ツイッター)アカウントに投稿していることも紹介されている(2025年4月15日付)。

 結果として、EVMJのバスは製造そのものが国内完結ではないにもかかわらず、「日本の万博には日本の電動バスを」という意識が先に立つ形となった。政治家や大臣の意向も重なり、EVバスの導入は政策主導で一気に進んだ面がある。

 ただし、バス事業を長く見てきた立場からいえば、車両の技術や製造だけでなく、「運用や整備の現場に関する理解」が政策を担う側に十分に共有されないまま議論が広がった点は否定できない。実際、バス事業の専門家は限られており、政策側の万博成功への思いと、「日本人の暮らしに寄り添う、静かに快走するモビリティ」といった同社のスローガンが重なり、そのまま導入が進んだ構図が見える。

 また、技術評価よりも導入実績が重視された流れもある。2022年の那覇バスを皮切りに、2023年には宮城交通、東急バス、富士急行グループ、伊予鉄バスなど、各地で採用例が広がった。しかし関西万博までの準備期間は十分とはいいがたかった。

 筆者(西山敏樹、都市工学者)も環境省の事業で電動バスの試作と評価に関わったが、採算性や環境面だけでなく、運転のしやすさ、乗客の使いやすさ、乗降時の安全や快適さまで含めて検証するのに3年を要した。この経験から見れば、大量導入を前提にした検証が十分でないまま実用段階に進んだこと、さらに現場の運行条件との違いが十分に詰められないまま残ったことがわかる。

 EVバスの技術や現場運用を見極める力が政策側に備わっていれば、今回のような展開は避けられた可能性がある。政策判断の側に課題があったことは否定しにくい。

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