「仕事にならない」「完全な死活問題だ」 99.3%の車体整備工場が塗料・シンナー供給制限に直面、現場で何が起きているのか?

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BICの緊急調査(306社・47都道府県)で、99.3%が塗料・シンナー不足、97.7%が生産低下を回答。供給網の詰まりは価格問題を超え、修理現場の稼働そのものを揺さぶり始めている。

供給判断の不透明性

調査結果(画像:BIC)
調査結果(画像:BIC)

 調査の自由記述の回答に共通して滲むのは、供給網の源流に対する抜き差しならない疑念だ。原料の調達から加工、そして商社を経由して工場へ至る長い道のりのどこかで、情報の遮断と制約が課されているのではないか。この上流工程は、価格形成や在庫状況、契約の裏側が外部からは極めて見えにくい。

 資源が枯渇した際、どの産業へ優先的に振り分けるかという判断が、現場のあずかり知らぬ場所で行われている可能性は否定できない。建築などの巨大産業に比べ、全国に小規模な事業者が点在する車体補修の分野は、供給側からすれば管理コストがかさむ“末端”に映る。その結果、この分野への供給が後回しにされているのではないか。

 どこで流れが淀んでいるのかも分からず、責任の所在も曖昧なまま、現場だけが真っ先に干上がっていく。表に出ることのない供給判断こそが、「数字の上では足りている」という当局の説明と、目の前の資材不足という現実との間に、深い溝を刻んでいる。

 この問題は、一業界の不況という枠組みでは捉えきれない。車体の補修は、事故対応や車両の安全維持そのものであり、道路の安全に直結する公衆の課題だ。供給の制限で修理が滞れば、不完全な状態の車両が路上に留まり続け、事故の種をまくことになりかねない。塗装もまた、美観のためだけにあるのではない。錆を防ぎ、車体の強度を守るという安全保障の一端を担っているからだ。

「事故に遭った車は、速やかに元通りになる」

という、これまで当たり前だった日本の前提がいま、足元から崩れようとしている。修理の遅滞は車両価値を損なうだけでなく、保険制度の運用にも波及しかねない。資材の欠乏は、一台の修理不能に留まらず、社会全体の交通安全という品質を静かに、確実に引き下げていく。

 この泥沼を抜け出せるかどうかは、外部の、それも上流の対応にかかっている。いま必要なのは、

・一時的な資金の投入
・備蓄の切り崩し

ではないだろう。供給のプロセスを上から下まで透明化し、有事において優先的に資材を回す仕組みを整えることである。

 具体的には、上流企業の出荷状況を精査し、不当な出荷調整が行われていないかを可視化しなければならない。その上で、事故修理などの安全に直結する用途へ資材を優先配分する枠組みを構築すべきだ。「総量は十分だ」という大局論だけでは、現場の出血は止まらない。どこで流れが止まっているのかを突き止め、優先順位の歪みを正す。この商流の機能不全を解消できるかどうかに、日本の車社会の行方がかかっている。

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