「1km = 50億円」の時代はもう終わったのか? 「新名神」で積み上がる2285億円、なぜ最後に残る区間ほど負担は重くなるのか
建設費高騰の構造

先進国の多くで進められてきた高速道路の建設。車が生活の主役となった現代において、移動時間を削り出してくれるこのインフラは、私たちの暮らしや経済を支える土台だといっていい。だが、この巨大な事業はいま、大きな壁に直面している。建設費の異常なまでの高騰だ。
かつて、高速道路の建設費は「1km = 50億円」がひとつの目安だった。しかし、現在の現場でこの数字はもはや過去のものとなりつつある。実際の支出は、この水準をはるかに上回るペースで増え続けているのが現実だ。
日本でこれほどまでに費用が膨らむのは、この国特有の険しい地形が大きく関わっている。山を切り拓き、延々とトンネルを掘り進める工事が連続すれば、当然ながらコストは跳ね上がる。それに加え、土地を手に入れるための費用も上がり、資材や人件費の高騰が追い打ちをかける。当初、将来は無料になると語られていた区間がいまだに有料のまま据え置かれている背景には、こうした積み重なる費用の壁がある。
いま現在進められている工事は、かつて技術的な難しさや工期の制約から後回しにされてきた「難所」ばかりだ。2026年4月時点で見ても、新名神高速道路の未開通区間における事業費が、当初の計画から
「約2285億円」
も増えるという事態が起きている。掘ってみるまで全容がわからない複雑な地層と向き合い、場所ごとに異なる工法を編み出さなければならない。その苦心が、そのまま数字に表れている。
一方で、目を向けるべきは数字の負の側面だけではない。高速道路網が整うことで、年間で約2.1兆円規模の移動時間短縮や物流コストの削減が生まれているという試算もある。社会全体が受ける恩恵を考えれば、その価値は決して小さくない。
莫大な費用をかけてでも道を繋げるのか、それとも別の道を探るのか――かつての目安が通用しなくなったいま、私たちはこの巨額の投資を支える仕組みそのものを見つめ直す時期に来ている。