「1km = 50億円」の時代はもう終わったのか? 「新名神」で積み上がる2285億円、なぜ最後に残る区間ほど負担は重くなるのか
北陸道と豪雪対応費用

日本の高速道路事業は、かつて日本道路公団という巨大な枠組みのなかで動いていた。しかし、積み重なった莫大な借金を背景に2005(平成17)年、民営化という大きな転換点を迎える。民間企業として効率を追い求めるかじを切ったはずだったが、いま、その運営はかつてない逆風にさらされている。一部の路線では、通行料金という「稼ぎ」だけでは、造るための費用や守るためのコストを支えきれない現実が浮き彫りになっている。
象徴的なのが東京外かく環状道路(外環道)だ。大泉ジャンクション(JCT)から三郷JCTまでの約30kmが動いていた時期、その事業費は約8800億円という巨額にのぼった。2002年の数字をひもとけば、約0.8兆円の収入に対し、支出は約1.6兆円。差し引きで約0.8兆円もの穴が開いている計算になる。都市部の道づくりでは、土地の権利をめぐる調整や騒音への対策、さらには環境への配慮など、周辺との折り合いをつけるために膨大な資金が投じられる。
一方で、目を向けるべきは通帳の数字だけではない。外環道は2002年時点で、社会全体に年間約1800億円もの経済的な実りをもたらしていた。2018年に千葉区間が繋がったことで利用者はさらに増えたが、それは同時に、高度に複雑化した設備を維持するためのコストが増えることも意味している。道路単体での儲けではなく、社会という大きな枠組みで効果を捉える。そうした危ういバランスの上に、いまの運営は成り立っている。
こうした課題は都市部だけに限らない。北陸自動車道や山陽自動車道でも、場所によって交通量に偏りがあり、支出が収入を追い越してしまう年があった。北陸道は雪国を貫く宿命から、冬場の除雪をはじめとした維持費が重くのしかかる。山陽道にしても、中国自動車道の代わりを担うべく整備されたものの、当初は既存の道に車が流れ、思うように利用が伸びない時期があった。
それでも、近年はどちらの路線も物流や人の動きを支える大動脈として、その存在感を強めている。高速道路の強みは、何といってもその速さだ。一般道が時速約35kmにとどまるのに対し、高速道路は時速約83.5km。この圧倒的な速度の差が、届くはずのなかった荷物を届け、行けなかった場所へ人を運ぶ。
たとえ財布の紐が厳しくなる路線であっても、その道があることで何が生まれているのか。収支という物差しだけでなく、複数の視点からその価値を測り直す必要があるのかもしれない。