なぜホンダは“道路問題”に踏み込んだのか? 橋の6割が老朽化する時代、インフラ崩壊に抗う「最後の担い手」
橋73万のうち6割が2032年に築50年超。補修が追いつかず、人手も足りない――日本の道路は転機にある。点検の限界を前に、走行データ活用や車側負担の拡大が進む中、インフラ維持と産業のあり方が問われている。
浮上機能が示す現実

ステランティスと手を組む中国の電気自動車(EV)メーカー、零●汽車(●はあしへんに包、リープモーター)は2026年4月1日、車体がふわりと浮き上がる新機能「リープモード」を英国向けに発表した。対象は新型車「C10」。路面の段差や陥没を乗り越える際、約2秒間で最大20cmほど車体を浮かび上がらせるという。
もっとも、これはエイプリルフールの企画であり、現実に市販されるわけではない。それでもこの発表が大きな注目を集めたのには、理由がある。いま英国では道路の穴が100万か所を超え、その修繕費も膨大な額にのぼるという、のっぴきならない事態に陥っているからだ。日本と同様、公的な枠組みによるインフラ維持が、もはや限界に達していることの証左ともいえる。
実際に車を浮かせるのは夢物語だとしても、走行データを通じて道の実態をつかむ手法は、インフラの質を守るうえで現実的な手立てとなる。これまで車という製品は、きれいに整えられた道があることを前提に作られてきた。だが、路面の傷みが放置されるのが日常となったいま、車側の性能として衝撃をいなしたり、危険をあらかじめ避けたりする力を高めざるをえない。
こうした性能の向上は、見方を変えれば、本来は公費で賄うべき道路維持のツケが、車の価格や開発費としてユーザーやメーカーに回り始めていることを意味している。インフラの不足を足回りの技術やデータの共有で補う状況は、メーカー側からすれば、自社の製品を守るための切実な防衛策でもある。一見冗談のようなこの企画は、道が抱える難題を車側が引き受けざるをえない、そんな歪んだ現状を浮き彫りにしている。