「技術の魂を取り戻せ」 ホンダ、最大2.5兆円損失からの復活劇? 過剰なEV戦略を乗り越え「三現主義」の再生なるか

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ホンダが上場以来最大となる6900億円の最終赤字に直面。累計2.5兆円規模の損失処理は、EV戦略の揺らぎと組織の歪みを直視し、ものづくり回帰を迫る転機となる。

研究開発の自由度と競争復活

日本人として初めて米国の自動車殿堂入りし、記者会見する本田宗一郎・本田技研最高顧問(東京・大手町のパレスホテル)。1989年12月25日撮影(画像:時事)
日本人として初めて米国の自動車殿堂入りし、記者会見する本田宗一郎・本田技研最高顧問(東京・大手町のパレスホテル)。1989年12月25日撮影(画像:時事)

 研究開発のあり方を根っこから見直し、本社の目先の数字に振り回されない独立した予算を、きちんと守り抜かなければならない。ひとつの狙いに対して複数のチームが競い合う「並行開発」を復活させ、社内に心地よい緊張感を取り戻す――かつて入交氏が「反対というならおまえもやって競争してみろ」と焚き付けたように、自由な発想をぶつけ合い、そこから磨き抜かれた技術と思想によって進むべき道を見極める。その力こそが、今の混迷を突き抜ける支えになるはずだ。

 市場の見方も、また変えなければならないだろう。スズキが4割ものシェアを握るインドという地で、追い抜くことだけを考えるのは得策とはいえない。1.5%という今の低い立ち位置から這い上がるには、車を売るだけの商売から一歩踏み出す必要がある。自慢のハイブリッド技術を、現地の暮らしや他社の仕組みへと繋いでいく。そんな役割の広がりが、今こそ求められている。

 同時に、人を評価する物差しも整え直すべきだろう。若い技術者が「これに乗りたい」と心から思える車を形にし、実際に試せる場を用意する。失敗を遠ざけるのではなく、挑む過程そのものを認める風土を作ることができれば、あの1960年代のような熱を、今の組織にも呼び戻せるに違いない。2兆5000億円という重い損失を、単なる痛手で終わらせず、次の成長の土台へと繋げる。今必要なのは、そんな泥臭い行動ではないか。

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