「技術の魂を取り戻せ」 ホンダ、最大2.5兆円損失からの復活劇? 過剰なEV戦略を乗り越え「三現主義」の再生なるか
ホンダが上場以来最大となる6900億円の最終赤字に直面。累計2.5兆円規模の損失処理は、EV戦略の揺らぎと組織の歪みを直視し、ものづくり回帰を迫る転機となる。
社長続投と責任論の整理

三部敏宏社長が辞任を選ばず、あえて職にとどまる判断を下したことには、当然ながら批判の矢面も向けられている。現状、その経営責任の重さは言及するまでもない。だが、この続投劇は、組織を立て直すための冷徹な役割分担として捉えることもできるのではないか。
今回の巨額損失は、三部氏自らが掲げた「2040年までの脱エンジン」という野心的な旗印を下ろし、現実に即した軌道へと戻す過程で避けられない清算でもある。自らの判断が招いた負の遺産を次世代に押しつけず、すべてを自分の任期中に吐き出し、確定させる。それこそが、ひとりの経営者としての、最も重い責任の取り方とも映る。
役員報酬の返上といった対応は、世間への体裁を整える「見せかけのけじめ」にすぎない面もある。本質はそこではなく、自己資本比率38%、手元資金4兆円超という盤石な財務を背景に、どれだけ早く財務上の重荷を処理し切れるかにある。この膿を今の段階で出し切っておくことは、後に続く社長や役員たちが不採算事業の後始末に追われる事態を防ぎ、現場に根ざしたものづくりに専念できる環境を整えることに繋がるはずだ。
自ら生み出した組織のゆがみを、自らの手で正す。新しい体制が迷いなく前に進むための土台を、泥をかぶってでも用意すること。それが、今この瞬間に三部氏に課せられた、最後の役割なのだろう。