BYD世界6位で露呈したEV競争の転換点――なぜ「車の出来」では勝敗が決まらなくなったのか?
非自動車出自の競争力

では、なぜ中国はEVで強さを持つのか。背景には、有力企業の出自が従来の自動車メーカーに限られない点がある。BYDは電池を起点に一貫して手がける体制を強みとする。EVの価格を押し上げ、普及の妨げとなってきたのが電池であるため、この点は大きな利点となった。ブレード電池に代表される内製の技術に加え、半導体など主要部品も自社で賄い、供給網の整え方にも独自の強みがある。こうした取り組みは、従来の自動車メーカーとは異なる出自だからこそ実現している。
生産面でも効率の向上が進んでいる。高度な自動化を取り入れた工場により、生産効率を三割高め、同時に費用も二割下げた。現在は世界百以上の国と地域で事業を展開し、Teslaと並ぶ存在となっている。海外にも複数の生産拠点を持ち、現地生産によって関税への対応と供給体制の強化を進めている。
小米集団(シャオミ)は、もともとスマートフォンで培った技術を強みとする。同社のEVは、自社の基本ソフト「HyperOS」を軸に、各種機器との連携や高い走行性能、進んだ運転支援に注目が集まっている。車内から家庭の機器を操作できるなど、日常とのつながりを広げている点も特徴だ。
運転支援では、LiDARやミリ波レーダー、高性能な計算基盤を全モデルに備え、複雑な交通状況への対応力を高めている。加速性能も高く、最上位モデルは停止から時速100kmまで2.78秒で到達する。走行距離も長く、急速充電により短時間で大きく回復できる。電池についても新技術の開発や提携を進めており、幅広い分野の知見を取り込んでいる。
創業者の雷軍の主導力にも関心が集まる。スティーブ・ジョブズと比較されることもあり、アップルに通じるブランドづくりの巧みさも指摘されている。
小鵬汽車(シャオペン)は、高速充電と先進的なAIによる自動運転、ソフト主導の開発を強みとする。EVの生産にとどまらず、AIや半導体、人型ロボット、空を移動する機体の開発にも力を入れ、「フィジカルAI企業」への転換を目指している。
充電では、480kW級の液冷式の超急速充電器を中国各地に配置している。20分で80%まで充電できる技術も持つ。自社開発のAIチップ「Turing」により車のなかで処理能力を高め、運転の自動化を進めている。電費の良さも特徴で、電池容量を抑えつつ長距離の走行を可能にし、費用面での強みにつなげている。先進の運転支援機能も備え、手の届きやすい価格帯の車種もそろえる。EVに加え、AIやロボットなど幅広い分野に取り組む姿勢は、利用時の体験を高める力にも結びついている。
理想汽車(リ・オート)の強みは技術そのものよりも、判断の速さにある。同社は起業家の李想が率いる。家族向けのハイブリッドSUV型の電動車に注力し、限られた市場を切り開いてきた。純粋なEVから、発電機を備えた方式へと量産の方針を切り替え、感染症拡大期の経営難を乗り越えた。強く速い判断が、成長を支えている。
起業家としての資金調達の力も大きい。大規模な資金を確保し、事業拡大の基盤を整えてきた点も見逃せない。