BYD世界6位で露呈したEV競争の転換点――なぜ「車の出来」では勝敗が決まらなくなったのか?

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EV競争は車の出来から、電力・ソフト・データを含む利用環境へ移った。中国は2700万台で首位、BYDが台頭。購入検討は約2週間へ短縮し、42%がEV志向。勝敗は車外の価値で決まる。

価値軸の変化

 従来の自動車の価値は何か。長年にわたりEVの研究を続けてきた慶應義塾大学名誉教授の清水浩氏は、

・加速感
・室内空間の広さ
・乗り心地

の三つに集約できると述べる。エンジン車では、この三点を満たすことがメーカーの役割だった。

 だがEVの広がりとともに、求められる要素は増えている。どこで電気を補えるのか。その一回でどれだけ走れるのか。走行データを集めて分析し、多くの利用者にどう役立てるか。車の動きを制御するソフトを無駄なく機能させられるか。さらに、自動運転への対応も視野に入る。

 こうした問いに応えられるかどうかで、優劣が決まるようになった。競争の枠組みは変わりつつある。対象は車一台ではなく、ソフト、データ、電力を含めた一体の利用環境へと広がっている。車の出来だけでなく、使う場面全体を見てメーカーを選ぶ視点が求められる。これまでの性能や品質を軸にした評価は揺らいでいる。

 Teadsの調査「自動車購入における世界各国の消費者動向調査結果」(2024年5月)では、環境への配慮が購入時の重要な要素となり、世界の消費者の42%がハイブリッド車やEVに絞って検討している。また43%が、オンラインで得る情報の重要性が高まったと答えている。使いやすくわかりやすい体験を短い期間で伝える力が、購入の判断を大きく左右する。

 こうした動きを捉えてEVを広げたのが中国のメーカー群である。価値の源は車の出来だけではない。ネットにつながった後の使い勝手や情報サービスのきめ細かさに関心が移っている。EVと相性のよいデジタル技術によるサービスに、若い世代の期待も集まっている。

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